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相続

遺産分割のための未成年者の特別代理人の選任方法

特別代理人選任の流れ

はじめに特別代理人の選任の流れを説明します。


  • 手順1

    特別代理人の候補者を決めます。


  • 手順2

    必要書類を準備します。必要書類については後で説明します。


  • 手順3

    未成年者の住所を管轄する家庭裁判所に必要書類を提出します。


  • 手順4

    家庭裁判所から申立人、15歳以上の未成年者及び特別代理人候補者に質問書と回答書が送付されます。それぞれが回答書に記入して返信します。


  • 手順5

    家庭裁判所が特別代理人を選任します。


  • 手順6

    相続人と特別代理人で遺産分割協議をし、それぞれが遺産分割協議書に記名押印します。その後、相続登記や預貯金の相続手続きをします。


以上が流れです。

特別代理人

次に特別代理人について説明します。

特別代理人の仕事

特別代理人は未成年者が不利益を被らないように未成年者の代わりにその他の相続人と遺産分割協議をします。

もっとも、特別代理人の選任申立て時に申立人によって遺産分割協議書案が作成されています。そのため、特別代理人の仕事は既に作成された遺産分割協議書に記名押印(実印)するという単純な作業で済むことが多いです。

よって、特別代理人の負担はそれほど大きなものではありません。そこで、未成年者の祖父母や叔父叔母など、法律の専門家でない者が特別代理人に就任することも可能です。

もっとも、これは裏を返せば特別代理人選任の申立て手続きにおいては専門知識が必要であることを意味します。

特別代理人の適格性

一般に遺産分割協議の当事者である相続人間では利害が対立します。そのため、特別代理人の候補者が他の相続人に対し債務を負担していたり、他の相続人から金銭的援助を受けていたりすると、特別代理人の候補者としては不適格です。

特別代理人の数

特別代理人は未成年者ごとに選任しなければなりません。例えば被相続人の相続人であり、かつ被相続人の配偶者の親権に服する子が複数名いればそれぞれ別の特別代理人が選任されます。よって、このような場合には未成年者の母方の祖父母、母方の叔父叔母が特別代理人に就任することが多いと思われます。

以上が特別代理人の説明です。

必要書類

次に特別代理人選任申立ての必要書類を説明します。ここでは親権者がその親権に服する子のために特別代理人の選任申立てをする場合の必要書類を説明します。

特別代理人選任申立書

この申立書のひな形は、ネットで「特別代理人選任の申立書(遺産分割協議)」と検索すれば家庭裁判所のサイトでダウンロードできます。

収入印紙

未成年者一人につき800円の収入印紙が必要です。

予納郵券

予納郵券は家庭裁判所によって異なりますが、84円切手×10枚、10円切手×10枚程度です。

戸籍謄本

申立人が未成年者の親権者であることを証明するために親権者と未成年者の戸籍謄本を提出します。(重複する場合は1通で構いません。)

また、被相続人の相続関係を証明する戸籍謄本も必要です。具体的には被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本です。ただし、被相続人の相続関係を証明する法定相続情報一覧図を提出すれば被相続人の相続関係を証明する戸籍謄本は不要です。

法定相続情報一覧図

被相続人の相続関係を証明する法定相続情報一覧図を提出します。

法定相続情報一覧図は法務局で作成するものですので、この作成には手間がかかります。そこで、先ほど説明したとおり、法定相続情報一覧図ではなく、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を提出しても構いません。

なお、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本ではなく、被相続人の相続関係を証明する法定相続情報一覧図の提出を推奨する理由は次のものです。

  1. 法定相続情報一覧図を提出しますと、家庭裁判所で被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本の原本を返還してもらう手間が省けます。
  2. 特別代理人選任後の相続手続きで法定相続情報一覧図を使用すると相談手続きを早くかつ簡易にすることができます。そこで、遅かれ早かれ法定相続情報一覧図を作成するならば、特別代理人選任申立前にこれを作成してしまいます。

未成年者の住民票

未成年者の現住所を証明する住民票を提出します。この住民票は念のため本籍地・筆頭者入りものを取得します。

なお、法定相続情報一覧図に未成年者の住所が記載されてあれば未成年者の住民票は不要であると考えられます。

特別代理人候補者の住民票

特別代理人候補者の住民票抄本を提出します。この住民票には本籍地・筆頭者・世帯主いずれの記載も不要です。

遺産分割協議書案

特別代理人が選任されますと、特別代理人とその他の相続人で遺産分割協議をします。そこで、申立時点で遺産分割協議書案を提出します。

そして、遺産分割協議書の内容は原則未成年者の法定相続分を確保する内容です。

具体的には次の内容にすると簡易に作成できます。

第1条 △△は財産全て取得する。

第2条 △△は債務全て承継する。

第3条 △△は第1条の代償として他の相続人に対し、各々の法定相続分に相当する金員を支払う。

この△△は申立人である親権者の氏名が入ります。

遺産目録

遺産目録には被相続人の財産・負債をすべて記入します。

遺産目録は、遺産が不動産であれば不動産の登記事項証明書のとおりに、預貯金であれば預貯金通帳(残高証明書)のとおりに正確に記入します。

また、不動産の固定資産税評価額がわかる書類(直近の固定資産税の納税通知書、評価証明書、名寄帳など)も提出します。

申立書の書き方

最後に特別代理人選任申立書の書き方を説明します。

家庭裁判所名

子の住所地を管轄する家庭裁判所名を記入します。この管轄は「○○市 家庭裁判所」と検索すれば裁判所のサイトで調べることができます。

日付

日付は家庭裁判所へ書類を提出する日付を記入します。

申立人の記名押印

申立人が記名押印します。署名でも構いません。押印は認印でよいです。

なお、ここで押印した印は裁判所からの送付される書類に押印する際に使用します。

添付書類欄

該当の書類にチェックを入れます。

申立人欄

申立人の住所・氏名・フリガナ・生年月日・職業・未成年者との関係を記入します。

職業は「会社員」、「公務員」、「自営業」などの抽象的な記載で構いません。無職の場合には「無職」と記入します。

未成年者欄

特別代理人を選任する未成年者の本籍・住所・氏名・フリガナ・生年月日・職業又は在校名を記入します。

在校名は○○小学校や○○中学校などの簡易な記載で構いません。

申立ての趣旨欄

「特別代理人の選任を求める。」と記入します。

申立ての理由欄

「利益相反する者」欄には「親権者と未成年者との間で利益が相反する。」と記入します。

「利益相反行為の内容」欄には「被相続人○○の遺産を分割するため。」と記入します。

「その詳細」欄には「申立人の夫、未成年者の父である被相続人○○の遺産につき遺産分割協議をするため。」と記入します。

特別代理人候補者欄

特別代理人の候補者の住所・氏名・フリガナ・生年月日・職業・未成年者との関係を記入します。

未成年者との関係の記入例は「母方の祖父」、「母方の叔母」、「他人」です。

なお、特別代理人候補者の適格性については家庭裁判所から送付される照会書・回答書を基に判断されます。

以上が申立書の記入例です。

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