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相続

相続放棄

相続人の地位

相続が発生した場合、相続人は単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかを選択します。

単純承認

単純承認とは被相続人の権利義務一切を相続することです。相続発生後、一定期間内に家庭裁判所で限定承認か相続放棄の手続きをしなかった場合、単純承認したとみなされます。

限定承認

限定承認とは被相続人の権利の範囲内で義務を相続することです。限定承認は実務上ほとんど利用されていません。

相続放棄

相続放棄とは被相続人の相続人たる地位を失わせることです。相続放棄をした者は被相続人の権利義務一切を相続しません。

相続放棄をするには、相続発生後一定の期間内に家庭裁判所で手続きをする必要があります。そして、その効力は被相続人の死亡時に遡って生じます。すなわち、相続放棄をした者は初めから相続人でなかったことになります。

相続放棄は主に被相続人の負債を相続しないために行われます。また、被相続人が所有していた不動産の管理責任を免れるためや、被相続人の相続手続きに関与しないためになされることもあります。

相続放棄の効果

権利義務の不承継

前述のとおり、相続放棄をすると相続放棄をした者は被相続人の権利義務一切を相続しません。そのため、相続放棄をする場合には次の手段はとれません。

  • 不動産を放棄し、預金を相続する。
  • 借金のみ放棄し、それ以外は相続する。
  • 固定資産税の納付義務を放棄し、不動産は相続する。

他の相続人への影響

第1順位の相続人全員が相続放棄をすると、第2順位者が相続人になります。そして、第2順位の相続人全員が相続放棄をすると、第3順位者が相続人になります。

そのため、同順位の相続人全員が相続放棄をする場合、次順位の相続人に大きな影響を与えるので、次順位の相続人に予め相続放棄がなされる旨を伝える必要があります。

※第1順位者等の説明はこちらの記事をご覧ください。

相続人全員が相続放棄

第1順位の相続人、第2順位の相続人、第3順位の相続人及び配偶者の全員が相続放棄をした場合、相続人が不存在の状態になります。この場合でも、相続放棄をした者は遺産の管理責任を負う場合があります。そして、かかる管理責任を免れるためには、遺産を管理する者(=相続財産清算人)を家庭裁判所で選任する必要があります。

相続放棄と財産放棄(遺産放棄)

相続放棄と似た言葉に「財産放棄」や「遺産放棄」があります。もっとも、「財産放棄」や「遺産放棄」は法律上の用語ではありません。

「財産放棄」や「遺産放棄」は、一般に遺産分割協議によって財産を取得しなくなったことを意味します。すなわち、相続人が単純承認をした上で、特定の遺産を取得しない旨の遺産分割協議をすることを「財産放棄」や「遺産放棄」と表現することがあります。例えば、次の場合です。

例:父親が亡くなり、父親の自宅をその長男が引き継ぐことを相続人間で合意した。

この例では自宅を長男が取得する旨の遺産分割協議が成立しており、長男以外は遺産分割協議により財産放棄(遺産放棄)をしたといえます。しかし、「財産放棄」や「遺産放棄」をした者は相続放棄をしていない以上、相続人であることにかわりはありません。そのため、この例では父親の負債が存在した場合、長男だけでなく、それ以外の相続人もかかる負債を相続します。

相続放棄の手続き

期限

相続放棄の期限は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。「自己のために相続の開始があったことを知った時」の詳細な説明はここでは割愛しますが、被相続人の死亡時から3か月以内と覚えておけば確実です。

流れ


  • 戸籍収集

    必要な戸籍を管轄の市区町村で取得します。被相続人と相続人の親等によって必要な戸籍範囲は変わります。


  • 書類作成

    相続放棄に必要な申請書(相続放棄申述書)を作成します。


  • 申述

    被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄申述書を提出します。


  • 回答書返信

    後日、家庭裁判所から相続放棄についての回答書が郵送されるので、記入し返送します。


  • 手続き完了

    相続放棄の申述が認められると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が郵送されます。

申立費用

収入印紙

裁判所に納めるものです。1人につき800円です。

予納郵券

裁判所に納める切手です。裁判所によって必要な金額は異なりますが数千円分です。

専門家報酬

相続放棄を専門家(弁護士か司法書士)に依頼する場合の報酬です。

費用負担者

申立費用は通常申立てをする本人が負担します。もっとも、第一順位及び第二順位の相続人が相続放棄をした場合、第三順位の相続人は疎遠の被相続人の相続について相続放棄をする負担を強いられることがあります。その場合には第三順位の相続人に金銭的な負担をかけないために、被相続人の子や配偶者は、第三順位の相続人の相続放棄手続きの費用も負担をすることを検討すべきです。

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