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相続

相続手続きに必要な戸籍

戸籍制度の概要

相続手続きは被相続人の相続関係を証明する戸籍を取得することから始まります。そして、相続手続きをスムーズに終えるには必要最小限度の戸籍を迅速・正確に収集する必要があります。

始めに戸籍制度の概要を説明します。

編製

戸籍は夫婦と、その夫婦と氏が同じ子を一つの単位として作成されます。そして、本籍地の市町村が戸籍を作成します。

例えば、男女が婚姻した場合、夫婦となった男女はその片方の氏を名乗りますが、「名乗る氏」を元から有する方を筆頭者とする戸籍が新たに作成されます。そして、その夫婦に子が生まれると、子はその夫婦の戸籍に入ります。このような戸籍の作成を戸籍の編製といいます。

戸籍法

第六条 戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。ただし、日本人でない者(以下「外国人」という。)と婚姻をした者又は配偶者がない者について新たに戸籍を編製するときは、その者及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。

改製

また、戸籍はその根拠法や管理体制が変わると、新しく作り直されます。これを改製といいます。改製が入りますと取得する戸籍は増えます。例えば、被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得する場合に、被相続人の出生後に戸籍の改製があれば、被相続人に婚姻歴などがなくても、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本は2通以上になります。

謄本と抄本

さらに、戸籍には謄本と抄本がありますが、個人情報保護の観点からは謄本と抄本は厳密に区別して取得すべきです。しかし、戸籍制度を理解していなければこれらを区別して取得することは難しいです。

ところで、戸籍抄本が必要な場合に戸籍謄本を提出しても問題はありません。これは大は小を兼ねるからです。これに対し、戸籍謄本が必要な場合に戸籍抄本を提出することは認められません。そのため、個人情報の管理上問題がなく、かつ手続きを簡易に進めたい場合には、取得する戸籍は一律謄本を取得します。

また、戸籍謄本は戸籍の全部事項証明書と、戸籍抄本は戸籍の個人事項証明書とも呼ばれます。

戸籍と除籍

戸籍中の人物が婚姻したり、死亡したりすると、その者は戸籍から除かれます。これを除籍といいます。そして、戸籍謄本中の人物が全員除籍された場合、この戸籍謄本は除籍謄本となります。但し、戸籍請求の場面では戸籍謄本と除籍謄本という呼び名を区別する必要性は低いですので、一律「戸籍」と呼んでも構いません。

以上が戸籍制度の概要です。

戸籍法

第十二条 一戸籍内の全員をその戸籍から除いたときは、その戸籍は、これを戸籍簿から除いて別につづり、除籍簿として、これを保存する。
② 第九条、第十一条及び前条の規定は、除籍簿及び除かれた戸籍について準用する。

法定相続人

次に法定相続人について説明します。相続が発生した場合は親族が相続人になりますが、その優先順位は民法という法律で定められています。この法律で定められた親族を法定相続人といいます。法定相続人には配偶者、第一順位の相続人、第二順位の相続人及び第三順位の相続人がいます。

なお、相続手続きで戸籍を集める目的は法定相続人及びその法定相続人の相続分(法定相続分)を確定することにあります。

法定相続人の中身を少し説明します。

配偶者

配偶者とは夫婦の片方です。被相続人死亡時に生存する配偶者は常に相続人です。※相続欠格や推定相続人の廃除あり。

よって、第一順位の相続人、第二順位の相続人又は第三順位の相続人がいれば、配偶者はその者と共同で相続人となります。

第一順位の相続人

配偶者以外に相続人となりうる親族の候補は複数います。但し、相続人になりうる親族の候補にはそれぞれ優先順位があり、第一順位の相続人、第ニ順位の相続人、第三順位の相続人の順で優先されます。つまり、第二順位の相続人は第一順位の相続人がいない場合に、第三順位の相続人は第一順位及び第二順位の相続人がいない場合に相続人となります。

第一順位の相続人とは被相続人の子です。子には被相続人の養子も含みます。また、被相続人の死亡以前にその子が死亡していれば、その子の子、すなわち被相続人の孫が相続人です。この場合、孫は子に代わって相続しますので、これを代襲相続と呼びます。さらに、被相続人の死亡以前に子と孫が死亡していれば、被相続人のひ孫が相続人です。この場合、ひ孫は子及び孫に代わって相続しますので、これを再代襲相続と呼びます。

ここでは第一順位の相続人を便宜上「第一順位者」と呼びます。

第ニ順位の相続人

第二順位の相続人とは被相続人の直系尊属です。直系尊属の例は被相続人の父母や祖父母です。そして、直系尊属が複数いればその全員が相続人です。例えば、被相続人に実親と養親がいる場合、実親と養親はいずれも相続人です。

また、親等が異なる直系尊属がいる場合は親等が近い直系尊属が相続人です。例えば、被相続人死亡時に父母と祖父母が存命の場合、被相続人からみて父母は一親等、祖父母はニ親等ですので、父母が相続人です。祖父母は相続人ではありません。

ここでは第ニ順位の相続人を便宜上「第ニ順位者」と呼びます。

第三順位の相続人

第三順位の相続人とは被相続人の兄弟姉妹です。また、被相続人の死亡以前にその兄弟姉妹が死亡していれば、兄弟姉妹の子、すなわち被相続人の甥姪が相続人です。この場合には被相続人の甥姪は被相続人の兄弟姉妹に代わって相続しますので、これを代襲相続と呼びます。

ここでは第三順位の相続人を便宜上「第三順位者」と呼びます。

以上が法定相続人の説明です。

相続手続きに必要な戸籍の範囲

次に本題の相続手続きに必要な戸籍の範囲を説明します。

相続手続きに必要な戸籍の範囲の説明は場合分けをして説明しなければなりません。なぜなら、「相続人が第一順位者、第二順位者、第三順位者のいずれに該当するか、被相続人死亡時に配偶者が存命か」などによって必要な戸籍の範囲は変わるからです。

また、相続人が第一順位者から第ニ順位者、第三順位者に上がるにつれて、揃える戸籍の範囲は広くなります。なぜなら、第二順者は第一順位者の不存在を、第三順位者は第一順位者及び第二順位者の不存在を戸籍で証明するからです。

同様に、配偶者のみが相続人の場合は、第一順位者、第二順位者及び第三順位者の不存在を戸籍で証明しますので揃える戸籍の範囲は広いです。

それでは順を追って必要な戸籍の範囲を説明します。

第一順位者が相続人

はじめに第一順位者が相続人の場合に必要な戸籍の範囲を説明します。

第一順位者が相続人の場合は次の戸籍が必要です。

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  2. 相続人の現在の戸籍抄本

まず、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得するのは被相続人の第一順位の相続人を確定するためです。なお、厳密にいえば被相続人の出生からの戸籍は不要で、おおむね10歳程度からの戸籍があれば足ります。これは人が実子に恵まれるのは生物学的に出生後一定年数経過する必要があるからです。また、養子は二十歳以上にならなければ迎えることができません。

但し、戸籍請求する際には一律被相続人の「出生から死亡まで」の戸籍謄本を請求します。なぜなら、このような請求方法が一番手っ取り早い方法だからです。

次に、相続人の戸籍の範囲は現在の戸籍抄本だけです。なぜなら相続人の場合は、被相続人との相続関係と、被相続人の死亡時に相続人が生存することを証明すれば足りるからです。無論、現在の戸籍謄本でも構いません。この相続人の扱いは後述の「第二順位者が相続人」、「第三順位者が相続人」、及び「配偶者のみ相続人」の場合も同様です。

なお、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と、相続人の現在の戸籍抄本が重複する場合、戸籍の重複分は謄本1通だけでよいです。例えば、被相続人の死亡除籍の記載のある戸籍謄本と、被相続人の配偶者や未婚の子の現在の戸籍抄本は重複することがあります。この場合は被相続人の死亡除籍の記載のある戸籍謄本のみで足り、配偶者や未婚の子の現在の戸籍抄本は不要です。

さらに、被相続人の配偶者が被相続人より先に死亡している場合には、その配偶者の死亡除籍の記載のある戸籍が必要です。但し、この場合は「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」と基本重複しますので、被相続人より先に死亡した配偶者の戸籍を取り立てて取得する必要はありません。この配偶者の扱いは後述の「第二順位者が相続人」、「第三順位者が相続人」、及び「相続人不存在」の場合も同様です。

以上が第一順位者が相続人の場合に必要な戸籍の範囲です。

第二順位者が相続人

次に第二順位者が相続人の場合に必要な戸籍の範囲を説明します。

第二順位者が相続人の場合は次の戸籍が必要です。

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  2. 相続人の現在の戸籍抄本

これらは前述の第一順位者が相続人の場合と同じですが、これらを揃える意味は異なります。すなわち、第一順位者が相続人の場合、「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」で第一順位者の存在を証明します。

これに対し、第ニ順位者が相続人の場合、「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」で第一順位者の不存在を証明します。

また、被相続人の父母が被相続人死亡以前に死亡し、被相続人の祖父母が相続人となる場合には、父母の死亡除籍の記載のある戸籍も必要です。つまり、第二順位の相続人となりうる者にも優先順位がありますので、被相続人の祖父母が相続人の場合には、祖父母は父母が被相続人死亡以前に死亡していることを証明します。

以上が第二順位者が相続人の場合に必要な戸籍の範囲です。

第三順位者が相続人

次に第三順位者が相続人の場合に必要な戸籍の範囲を説明します。

第三順位者が相続人の場合は次の戸籍が必要です。

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  2. 被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本
  3. 相続人の現在の戸籍抄本

まず、「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」で第一順位者の不存在を証明します。次に、「被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本」で、第二順位者の不存在及び第三順位者の存在を証明します。

また、第三順位者が相続人の場合は、第一順位者又は第二順位者が相続人の場合に比べて取得する戸籍の量が多いです。

加えて、相続人が相続手続きに必要な戸籍を容易に取得できません。すなわち、戸籍法においては縦の血縁関係(直系尊属・直系卑属)の者の戸籍は原則取得することができますが、横の血縁関係(傍系血族)の者の戸籍は原則取得できません。平たく言えば、自分の親や子の戸籍は取得できても、兄弟姉妹の戸籍は原則取得できません。

そのため、第三順位者が相続人の場合には第一順位者又は第二順位者が相続人の場合に比べて戸籍取得の難易度が格段にあがります。

以上が第三順位者が相続人の場合に必要な戸籍の範囲です。

配偶者のみ相続人

次に配偶者のみが相続人の場合に必要な戸籍の範囲を説明します。

配偶者のみが相続人の場合は次の戸籍が必要です。

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  2. 被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本
  3. 相続人の現在の戸籍抄本

これは前述の第三順位者が相続人の場合と同じです。しかし、「被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本」を揃える意味は異なります。すなわち、第三順位者が相続人の場合は「被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本」で第二順位者の不存在及び第三順位者の存在を証明します。

これに対し、配偶者のみが相続人の場合は「被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本」で第二順位者の不存在及び第三順位者の不存在を証明します。

また、この場合も第三順位者が相続人の場合と同様に、配偶者は相続手続きに必要な戸籍を容易に取得できません。

以上が配偶者のみが相続人の場合に必要な戸籍の範囲です。

相続人不存在

最後に相続人が不存在の場合に必要な戸籍の範囲を説明します。

相続人が不存在の場合には次の戸籍が必要です。

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  2. 被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本

これは前述の第三順位者が相続人の場合とほぼ同じです。但し、この場合はこれらの戸籍で相続人が不存在であることを証明します。

なお、相続人が不存在であり、被相続人の相続関係を証明する戸籍を揃える場合とは、家庭裁判所に相続財産の清算人の選任申立てをする場合です。

以上が相続人が不存在の場合に必要な戸籍の範囲です。

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