第三順位の相続人
ここでは第三順位の相続人である被相続人の兄弟姉妹が申出をする場合の法定相続情報一覧図の作成方法を説明します。
また、被相続人の死亡以前に被相続人の兄弟姉妹が死亡していれば、その兄弟姉妹の子、すなわち被相続人の甥姪が相続人となり得ます。この場合、被相続人の甥姪は被相続人の兄弟姉妹に代わって相続しますので、これを代襲相続といいます。
そして、この場合の代襲相続する被相続人の甥姪を「代襲者」と、代襲相続される被相続人の兄弟姉妹を「被代襲者」といいます。
代襲相続が発生している場合、後述の必要書類や相続関係説明図の作成方法に影響が出ます。
法定相続情報一覧図作成の流れ
はじめに法定相続情報一覧図作成の流れを説明します。
手順1
被相続人の相続関係を証明する戸籍謄本などを取得します。
手順2
相続関係説明図を作成します。相続関係説明図のひな形はネットで「法定相続情報一覧図」で検索すると、法務局のページからダウンロードできます。
手順3
「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」を作成します。この申出書のひな形はネットで「法定相続情報一覧図 申出書」で検索すると、法務局のページからダウンロードできます。
手順4
申出書、相続関係説明図及び必要書類を管轄法務局に提出します。管轄法務局が遠方であれば郵送でも構いません。
手順5
手続き完了後、法務局で法定相続情報一覧図を受け取ります。法定相続情報一覧図は郵送で受け取ることもできます。
以上が法定相続情報一覧図作成の流れです。
法定相続情報一覧図作成の必要書類
次に法定相続情報一覧図作成の必要書類を説明します。
相続関係説明図
相続関係説明図とは被相続人の相続関係を家系図のように表記した書類です。相続関係説明図の内容はそのまま法定相続情報一覧図の内容となります。相続関係説明図の作成方法は後で説明します。
申出人の本人確認書類
申出人の本人確認ができる公的書類のコピーを1点提出します。例えば次の書類です。
- 運転免許証の表裏両面のコピー
- マイナンバーカードの表面のコピー
- 戸籍の附票のコピー
また、本人確認書類のコピーには申出人が「原本と相違ない」という文言と、申出人の氏名を記入します。
戸籍謄本
申出をするには被相続人の相続関係を証明する戸籍謄本が必要です。必要な戸籍謄本の範囲は「申出人(相続人)が、第一順位、第二順位、第三順位の相続人のいずれに該当するか」などによってかわります。
申出人が第三順位の相続人である被相続人の兄弟姉妹の場合に必要な戸籍謄本は次のものです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人の現在の戸籍謄本(抄本)
また、代襲相続が発生している場合には次の戸籍謄本も必要です。
- 被代襲者の出生から死亡までの戸籍謄本 ※例外有
なお、これらの戸籍謄本は重複することがありますが、重複分は謄本1通でよいです。
※被相続人の祖父母の死亡記載のある除籍謄本が必要な場合があります。
(ところで、第三順位の相続人が被相続人の相続関係を証明する戸籍謄本を取得する場合は、第一順位の相続人又は第二順位の相続人が戸籍謄本を取得する場合に比べて取得する戸籍の量が多いです。
加えて、第三順位の相続人は必要な戸籍謄本を容易には取得できません。すなわち、戸籍法においては縦の血縁関係(直系尊属・直系卑属)の者の戸籍は容易に取得することができますが、横の血縁関係(傍系血族)の者の戸籍は容易に取得できません。平たく言えば、自分の親や子の戸籍は容易に取得できても、自分の兄弟姉妹や甥姪の戸籍は容易に取得できません。
なぜなら、自分の兄弟姉妹や甥姪の戸籍を取得する場合は原則戸籍を取得する理由を市町村に説明しなければならないからです。
そのため、第三順位の相続人が必要な戸籍謄本を取得する場合は第一順位の相続人又は第二順位の相続人が戸籍謄本を取得する場合に比べて戸籍取得の難易度が格段にあがります。)
被相続人の戸籍の附票
被相続人の戸籍謄本を取得する際には、併せて被相続人の死亡時の戸籍の附票謄本を取得します。戸籍の附票は本籍地及び筆頭者入りのものです。
戸籍の附票とは戸籍に付随して作成され、住所の変遷がわかるものです。被相続人の住民票の除票(本籍地入)でも構いません。
相続人の戸籍の附票
相続人の戸籍謄本(抄本)を取得する際には、併せて相続人の現在戸籍の附票謄本(抄本)を取得します。戸籍の附票は本籍地及び筆頭者入りのものです。相続人の住民票の抄本でも構いません。
以上が法定相続情報一覧図作成の必要書類です。
相続関係説明図の作成方法
次に相続関係説明図の作成方法を説明します。ここでは第三順位の相続人である被相続人の兄弟姉妹が申出をする場合の作成方法を説明します。相続関係説明図はA4サイズの縦方向で作成します。
また、既述のとおり、相続関係説明図の内容はそのまま法定相続情報一覧図の内容となりますので、正確に記入します。そして、誤植が見つかった場合には訂正印で訂正するのではなく、再作成となります。よって、相続関係説明図はワードかエクセルで作成してデータを保存するか、手書きの場合には予備のコピーを準備します。
表題
表題には「被相続人〇〇法定相続情報」と記入します。この〇〇には被相続人の氏名が入ります。
被相続人の欄
相続関係説明図は被相続人を中心に作成します。
被相続人の欄には被相続人の次の情報を戸籍及び戸籍の附票(住民票の除票)のとおりに記入します。
- 最後の住所
- 最後の本籍
- 出生(生年月日)
- 死亡(死亡年月日)
- (被相続人)の表記
- 氏名
以上が被相続人の欄に記入する事項です。
配偶者の欄
相続人の中に、被相続人の配偶者がいる場合は配偶者の情報を記入します。
配偶者の情報を記入するにはまず、被相続人と配偶者の間に二重線を引きます。次に、配偶者の次の情報を戸籍及び戸籍の附票(住民票)のとおりに記入します。
- 住所
- 出生(生年月日)
- (夫)又は(妻)の表記
- 氏名
これに対し、被相続人の死亡以前にその配偶者が死亡している場合には、配偶者については何も記入しません。
父母の欄
被相続人の父母を(父)(母)と記入します。被相続人の父母の氏名・生年月日などは記入しません。
第三順位の相続人の欄
第三順位の相続人を記入するにはまず、被相続人の父母の間の二重線から線を引きます。そして、第三順位の相続人である被相続人の兄弟姉妹が複数いる場合には枝分かれさせます。
次に、第三順位の相続人である被相続人の兄弟姉妹の次の情報を戸籍及び戸籍の附票(住民票)のとおりに記入します。
- 住所
- 出生(生年月日)
- (兄)(姉)(弟)(妹)の表記
- 氏名
なお、(兄)(姉)(弟)(妹)の表記は被相続人からみた続柄です。
相続人の中に被相続人の実父母の養子がいる場合も(兄)(姉)(弟)(妹)の表記をしますが、この場合にも生年月日を基準に判断します。
また、法定相続情報一覧図の作成の申出をする者については、その氏名の横に(申出人)と記入します。
被代襲者及び代襲者の欄
代襲相続が発生している場合には、まず「(被代襲者)」の表記と、被代襲者の死亡年月日を記入します。被代襲者の氏名・生年月日などは記入しません。
次に、被代襲者から線を引き、代襲者の次の情報を戸籍及び戸籍の附票(住民票)のとおりに記入します。
- 住所
- 出生(生年月日)
- (甥)(姪)の表記
- (代襲者)の表記
- 氏名
なお、(甥)(姪)の表記は被相続人からみた続柄です。
また、代襲者が複数いる場合には枝分かれさせた上で各々の情報を記入します。
末尾
相続関係説明図の記入が終わりましたら、「以下余白」と記入します。
「作成日」には申出書を法務局に提出する日を、「作成者」には申出人の住所・氏名を記入します。
また、A4用紙の下から約5cm以上をあけます。(下から約5cmの範囲に認証文が付されるため。)
以上が相続関係説明図の作成方法です。
法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書の書き方
最後に「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」の書き方を説明します。申出書はA4サイズで作成します。申出書に記載すべき事項は次の通りです。
申出年月日
申出年月日には申出書を法務局に提出する日を記入します。郵送の場合は発送日で構いません。
被相続人の表示
被相続人の氏名、最後の住所、生年月日及び死亡年月日を記入します。
申出人の表示
申出人の住所、氏名、連絡先及び被相続人との続柄を記入します。
代理人の表示
代理人の表示は空欄です。
利用目的
利用目的とは法定相続情報一覧図を利用する目的です。利用目的の記載例は次のとおりです。
- 不動産登記
- 預貯金の払戻し
必要な写しの通数・交付方法
「必要な写しの通数」には、請求する法定相続情報一覧図の通数を記入します。(この請求では何通請求しても手数料は無料ですので、合理的な範囲で多めに請求します。)
また、「交付方法」には、手続き完了後に法定相続情報一覧図を法務局窓口で受け取る場合は「窓口で受取」と、郵送で受け取る場合は「郵送」と記入します。
被相続人名義の不動産の有無
被相続人名義の不動産が有る場合には「有」と記入し、その不動産所在事項又は不動産番号を記入します。被相続人名義の不動産が無い場合には「無」と記入します。
申出先登記所の種別
申出はどこの法務局にしてもよいという訳でありません。申出先の法務局は次の場所のいずれかを管轄する法務局です。
- 被相続人の本籍地(=被相続人の死亡時の本籍)
- 被相続人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
そこで、「申出先登記所の種別」には、申出人がこれらの場所を管轄する法務局の内、どの法務局に申出をするかを記入します。
(なお、これらの場所が重複する場合には一つのみ記入すれば足ります。例えば、被相続人の本籍地と最後の住所地を管轄する法務局が同じ場合には「被相続人の本籍地」と記入すればよいです。)
法務局名
管轄の法務局名を記入します。管轄法務局とは先ほどの「申出先登記所の種別」で選択した場所を管轄する法務局です。そして、法務局の管轄は不動産登記の管轄と同じですので、ネットで「〇〇市 不動産登記」と検索すれば出てきます。
以上が申出書の書き方です。