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その他

建物を増築リフォームした場合の不動産登記

不動産登記

建物を増築又はリフォームした場合、建物の不動産登記をしなければならないときがあります。

「不動産登記をする」とは「不動産の登記記録を書き換える」ことを意味します。

「不動産の登記記録」とは不動産の物理的状況や権利関係を公示した情報で、法務局が管理する情報です。

建物を増築又はリフォームした場合に行うべき不動産登記は事案ごとに異なります。ここではこの場合に必要となり得る不動産登記を説明します。

なお、建物を「増築又はリフォームすること」をここでは便宜的に建物の「増築リフォーム」とよびます。

建物表題部の変更登記

建物を増築リフォームし、建物の物理的状況に変更が生じた場合には建物表題部の変更登記をするときがあります。

この「建物の物理的状況に変更が生じた場合」とは例えば、建物の屋根の素材や建物の床面積が変わった場合です。

また、不動産の「表題部の変更登記」とは不動産の登記記録の物理的状況にかかる情報を書き換える手続きです。

不動産の表題部の変更登記の依頼先は土地家屋調査士です。

所有権移転登記

「建物の所有者」と、「建物の増築リフォームにかかる資金の負担者」が異なる場合は贈与税回避のために建物の所有権移転登記をするときがあります。

「所有権移転登記」とは不動産の登記記録の権利関係にかかる情報を書き換える手続きです。

例えば次の場合です。

  • 父が所有する建物(固定資産税評価額300万円)に、子が1,200万円の資金でリフォームをする。

この場合に贈与税対策をしないままでいますと、子から父へ1,200万円の贈与があったとみなされます。

そこで、この場合は建物のリフォーム後に建物の所有権割合を次のとおりに変更する所有権移転登記をします。

  • 父:300万円/300万円+1,200万円=300/1500
  • 子:1,200万円/300万円+1,200万円=1200/1500

ところで、不動産を複数人で所有することを「共有」と、共有する者を「共有者」と、共有者が各々有する不動産の権利割合を「持分」といいます。

この事例では、父から子へ建物の持分1200/1500が譲渡されています。

そして、この譲渡に基づいて所有権移転登記をします。所有権移転登記の依頼先は司法書士です。

譲渡所得税

このようにして贈与税回避のために父から子へ建物の持分を譲渡しますが、この際父については譲渡所得税を考慮しなければなりません。

譲渡所得税とは譲渡所得が生じた場合に課せられうる税金です。そして、譲渡所得とは譲渡収入から経費を差し引いたものです。

この事例では、父が子へ譲渡する建物の持分の対価が譲渡収入です。そして、この譲渡収入の金額と、父の建物の取得費等を比較し、譲渡収入が取得費等を上回れば父には譲渡所得が生じます。

住宅借入金等特別控除

住宅ローンを利用して建物の増築リフォームをする場合には住宅借入金等特別控除の要件を考慮しなければなりません。

住宅借入金等特別控除とは住宅ローンの年末残高を基にして計算した金額を、所得税額から控除できる制度で、住宅ローン控除や住宅ローン減税とよばれています。

そして、住宅借入金等特別控除の適用を受けるための要件の一つに、建物の増築リフォームの請負契約締結前に、住宅ローンの利用者がその建物を所有又は共有していなければならないというものがあります。

先の事例で、子が建物のリフォームにかかる資金につき住宅ローンを利用し、住宅借入金等特別控除の適用を受ける場合は、建物のリフォームの請負契約締結前に子が建物を所有又は共有している必要があります。

よって、この場合には、建物のリフォームの請負契約締結前に父から子へ建物の持分の全部又は一部を譲渡します。そして、この譲渡に基づいて所有権移転登記をします。

(なお、この譲渡は住宅借入金等特別控除の要件を具備するためのものですので、贈与税がかからない範囲、すなわち暦年贈与の非課税枠の範囲で行うことができます。)

贈与税の申告

このように建物を増築リフォームした場合、贈与税回避のための所有権移転登記と、住宅借入金等特別控除適用ための所有権移転登記をすることがあります。

すなわち、所有権移転登記を二回することがあります。もっとも、所有権移転登記を二回しますと登記費用が二件分必要です。

そこで、建物の増築リフォームの請負契約締結前に建物の全部または一部を贈与した上で、贈与税の申告・納税をしたり、相続時精算課税制度を利用したりすることで、所有権移転登記を一回で済ませることがあります。

例えば先の事例では、建物のリフォームの請負契約締結前に、父から子へ建物の所有権全部を贈与し、これに基づいて所有権移転登記をします。

このような方法を採りますと、贈与税の申告・納税は必要ですが、所有権移転登記は一回で済みます。

実際に建物の増築リフォームが行われる場合にどのような方法を採るべきかはケースバイケースです。事案ごとに当事者の費用負担や手続き負担を考慮して方法を決めます。

 

(建物の表示に関する登記の登記事項)
第四十四条 建物の表示に関する登記の登記事項は、第二十七条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である建物にあっては、当該建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)
二 家屋番号
三 建物の種類、構造及び床面積
四 建物の名称があるときは、その名称
五 附属建物があるときは、その所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である附属建物にあっては、当該附属建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)並びに種類、構造及び床面積
六 建物が共用部分又は団地共用部分であるときは、その旨
七 建物又は附属建物が区分建物であるときは、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の構造及び床面積
八 建物又は附属建物が区分建物である場合であって、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の名称があるときは、その名称
九 建物又は附属建物が区分建物である場合において、当該区分建物について区分所有法第二条第六項に規定する敷地利用権(登記されたものに限る。)であって、区分所有法第二十二条第一項本文(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により区分所有者の有する専有部分と分離して処分することができないもの(以下「敷地権」という。)があるときは、その敷地権
2 前項第三号、第五号及び第七号の建物の種類、構造及び床面積に関し必要な事項は、法務省令で定める。

(建物の表題部の変更の登記)
第五十一条 第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
2 前項の登記事項について変更があった後に表題部所有者又は所有権の登記名義人となった者は、その者に係る表題部所有者についての更正の登記又は所有権の登記があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
3 第一項の登記事項について変更があった後に共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記があったときは、所有者(前二項の規定により登記を申請しなければならない者を除く。)は、共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がされた日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
4 共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物について、第一項の登記事項について変更があった後に所有権を取得した者(前項の規定により登記を申請しなければならない者を除く。)は、その所有権の取得の日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
5 建物が区分建物である場合において、第四十四条第一項第一号(区分建物である建物に係るものに限る。)又は第七号から第九号までに掲げる登記事項(同号に掲げる登記事項にあっては、法務省令で定めるものに限る。次項及び第五十三条第二項において同じ。)に関する変更の登記は、当該登記に係る区分建物と同じ一棟の建物に属する他の区分建物についてされた変更の登記としての効力を有する。
6 前項の場合において、同項に規定する登記事項に関する変更の登記がされたときは、登記官は、職権で、当該一棟の建物に属する他の区分建物について、当該登記事項に関する変更の登記をしなければならない。

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