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抵当権の解除手続き

抵当権の解除に関する用語

はじめに抵当権の解除に関する用語を説明します。

抵当権

抵当権とは不動産の担保の一つです。住宅ローンを利用する場合、金融機関は建物及びその敷地(=不動産)に抵当権を設定しています。

抵当権の解除手続き

抵当権の解除手続きとは抵当権抹消登記に必要な書類を揃えて、管轄法務局に抵当権抹消登記を申請する手続きをいいます。

抵当権抹消登記

抵当権抹消登記とは不動産から抵当権を外す登記です。抵当権抹消登記の申請先は不動産所在地を管轄する法務局です。

抵当権者

抵当権者とは住宅ローンの貸主である金融機関又はその金融機関の保証会社です。住宅ローンの返済が滞った場合には抵当権者は不動産を競売にかけることができます。

抵当権設定者

抵当権設定者とは抵当権が設定されてある不動産の所有者です。そして、抵当権抹消登記の申請は抵当権者と抵当権設定者の関与が必要です。すなわち、住宅ローンの債務者でなくても、抵当権が設定されてある不動産の所有者(物上保証人)であれば、抵当権抹消登記に関与しなければなりません。

以上が抵当権の解除に関する用語です。

抵当権抹消登記の流れ

次に抵当権抹消登記の流れを説明します。


  • 手順1

    抵当権抹消登記をする不動産を把握するために、抵当権者から受領した抵当権設定契約証書を確認します。


  • 手順2

    抵当権抹消登記をする不動産を確定するために、法務局にいき、手順1で把握した不動産の登記事項証明書を取得します。


  • 手順3

    不動産登記事項証明書の所有者欄を確認し、抵当権設定者の住所・氏名に変更がないか確認します。ここで、住所・氏名に変更がある場合には先に住所氏名変更登記が必要です。また、相続登記が必要な場合は先に相続登記が必要です。住所氏名変更登記と相続登記いずれも必要な場合にはこれらのどちらを先に申請しても構いません。


  • 手順4

    抵当権者から受領した抵当権解除証書、権利証、及び委任状を確認します。


  • 手順5

    法務局に提出する抵当権抹消登記の申請書を作成します。申請書のひな形はネットで「法務省 抵当権抹消登記申請書」で検索すると、法務省のページからダウンロードできます。


  • 手順6

    申請書、収入印紙及び添付書類を管轄法務局に提出します。管轄法務局が遠方であれば郵送でも構いません。なお、法務局に書類を提出する前に、法務局の無料相談で書類に不備がないか確認してもらうと申請手続きがスムーズに進みます。


  • 手順7

    登記完了後、法務局で登記完了証を受け取ります。登記完了証は郵送で受け取ることもできます。


以上が抵当権抹消登記の流れです。

抵当権抹消登記の必要書類

次に抵当権抹消登記の必要書類を説明します。この必要書類は抵当権者が準備する書類と、抵当権設定者が準備する書類に大別できます。

抵当権解除証書

抵当権解除証書とは抵当権者が抵当権を解除したことを証明する書類で、抵当権者が作成します。抵当権解除証書は登記申請書の添付情報欄の「登記原因証明情報」にあたります。

抵当権解除証書の書き方はこちらの記事

権利証

権利証とは登記がされたことを証明する書類です。抵当権の登記が完了した際には抵当権者に対して登記済証又は登記識別情報が発行されています。そして、抵当権抹消登記に必要な権利証はこの抵当権者に発行された登記済証又は登記識別情報です。よって、抵当権抹消登記に使用する権利証は抵当権者が保管していますので、抵当権者から受け取ります。また、抵当権設定者が保管している権利証、すなわち不動産所有者を証明する権利証は抵当権抹消登記では使用しません。

なお、抵当権者から受け取った権利証を紛失した場合には事前通知の手続きをとります。事前通知の手続きの説明はここでは割愛します。

委任状

抵当権抹消登記は抵当権者と抵当権設定者の両方が手続きに関与しなければなりません。但し、抵当権者が登記手続きに直接関与することはなく、抵当権者は抵当権設定者に対して抵当権抹消登記の委任状を交付して抵当権設定者に登記手続きの代理を委任します。委任状は登記申請書の添付情報欄の「代理権限証明情報」にあたります。

以上が抵当権者が準備する書類です。これらの書類は通常住宅ローン完済後に金融機関から住宅ローンの債務者に郵送されます。

次に抵当権設定者が準備する書類を説明します。

不動産の登記事項証明書

不動産の登記事項証明書とは、不動産の登録内容を証明する書類です。不動産の登記事項証明書は法務局が発行するもので、登記事項証明書が取得できる法務局であれば、不動産の所在地を問わず、全国どこの法務局でも取得できます。そして、不動産の登記事項証明書を確認することで、抵当権抹消登記の対象である不動産を特定したり、住所氏名変更登記や相続登記の要否を確認したりできます。

また、法務局で登記事項証明書を取得する代わりにインターネットで登記情報を取得することもできます。登記情報とは登記事項証明書の内容をインターネット上で確認するものです。もっとも、登記情報の取得には登録手続きが必要ですので、抵当権抹消登記のためだけに登記情報を取得することはかえって手続きを煩雑にする可能性があります。

なお、不動産の登記事項証明書及び登記情報は登記申請書の添付書類ではないので法務局に提出はしませんが、登記申請書の作成に必要な書類です。

変更証明書

変更証明書とは、抵当権者の本店や商号に変更があった場合に必要な書類です。具体的には抵当権者である法人の履歴事項証明書です。変更証明書は必要な場合と不要な場合があります。

例えば、不動産の登記事項証明書の抵当権者の本店と、抵当権解除証書及び委任状に記載されてある抵当権者の本店が一致しない場合には抵当権者である法人の履歴事項証明書を取得して、本店移転の変遷を証明しなければなりません。

なお、司法書士に抵当権抹消登記を依頼すると変更証明書は司法書士が取得してくれます。司法書士に依頼しない場合には金融機関の窓口で相談するとよいです。変更証明書を添付する場合には登記申請書の添付情報欄に「変更証明情報」と記入します。

また、前述のとおり、抵当権設定者の住所・氏名に変更があった場合には住所氏名変更登記が必要です。変更証明書を添付するのは抵当権者の本店・商号に変更があった場合に限られます。

以上が抵当権設定者が準備する書類です。

抵当権抹消登記の申請書の書き方

最後に抵当権抹消登記の申請書の書き方を説明します。申請書はA4サイズで作成します。また、収入印紙を貼り付けるためのA4の白紙1枚も準備します。申請書に記入する事項は次の通りです。

登記の目的

登記の目的には「抵当権抹消」と記入します。根抵当権を解除する場合は「根抵当権抹消」と記入します。

登記の目的 抵当権抹消

原因

原因には抵当権の解除原因とその日付を記入します。具体的には抵当権解除証書を確認し、そこに「令和年月日 解除」のように記載されてあれば、それをそのまま記入します。このような記載がない場合は抵当権解除証書の発行日を記入し、抵当権解除証書記載の文言を記入します。抵当権解除証書記載の文言には「解除」、「弁済」、「主債務消滅」などがあります。抵当権解除証書の記載から解除の日付がわからない場合には住宅ローンの完済日を記入します。

原因 令和年月日解除

権利者

権利者欄には抵当権設定者の住所・氏名・連絡先を記入し、認印を押印します。

権利者 島根県松江市殿町一丁目1番1号 
田中太郎 ㊞ 
電話番号 090-0000-0000

また、抵当権設定者が2人以上いる場合には、各々の住所・氏名・連絡先を記入し、認印を押印します。なお、これらの者の記載の順番は問われません。下記の例では田中仁を田中太郎より上に記入しても構いません。

権利者 島根県松江市殿町一丁目1番1号 
田中太郎 ㊞ 
電話番号 090-0000-0000
島根県松江市殿町一丁目1番1号 
田中仁 ㊞ 
電話番号 090-0000-0000

義務者

義務者欄には抵当権者の本店・商号・会社法人等番号・代表者を記入します。これらの情報は抵当権解除証書及び委任状の記載通りに正確に記入します。また、登記申請書には添付書類として、抵当権者の委任状を添付しますので、抵当権者は登記申請書の義務者欄に押印する必要はありません。

義務者 島根県松江市魚町10番地
株式会社山陰合同銀行(会社法人等番号1234-56-789012)
代表取締役 A

添付情報

添付情報には「登記原因証明情報」、「登記識別情報又は登記済証」、「代理権限証明情報」及び「会社法人等番号」と記入します。

添付情報 登記原因証明情報 登記識別情報又は登記済証 代理権限証明情報 会社法人等番号

不動産の表示

不動産の表示には、土地であれば所在・地番・地目・地積を、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積を記入します。これらは不動産の登記事項証明書のとおりに記入します。

なお、不動産の表示は抵当権者から返却された抵当権設定契約証書のとおりには記入しません。なぜなら、これらの表記は不動産の登記事項証明書の表記と必ずしも一致しないからです。

そして、不動産の表示の下に、抹消する抵当権の順位番号を記入します。抹消する抵当権の順位番号は不動産の登記事項証明書をみて確認します。

所在
地番
地目
地積
松江市殿町一丁目
11番
宅地
100・00平方メートル
(順位番号 1番)
所在
家屋番号
種類
構造
床面積
松江市殿町一丁目11番地
11番
居宅
木造かわらぶき2階建
1階 40・00平方メートル
2階 30・00平方メートル
(順位番号 1番)

また、いわゆる分譲マンションなどの区分建物の不動産の表示はこれらと異なります。区分建物の記入方法の説明はここでは割愛しますが、ネットで「法務省 区分建物登記申請書」と検索すれば出てきます。区分建物の表示の記入が終わりましたら、その下に抹消する抵当権の順位番号を記入します。

申請日及び管轄の法務局

申請日には登記申請書を法務局に提出する日を記入します。郵送の場合は発送日で構いません。

また、申請日の横に、登記を申請する管轄の法務局名を記入します。管轄の法務局とは不動産の所在地を管轄する法務局です。管轄の法務局はネットで「〇〇市 不動産登記」と検索すれば出てきます。

令和年月日申請 松江地方法務局 御中

登録免許税

登録免許税にはその金額を金〇〇円と記入します。登録免許税の額は、不動産の個数×1,000円です。敷地権付区分建物の場合には敷地権も不動産の個数にカウントして計算します。但し、敷地権の種類が賃借権の場合はカウントしません。

また、登録免許税は収入印紙で納付しますので、登録免許税の金額分の収入印紙を購入し、A4サイズの白紙に貼り付けます。

登録免許税 金2,000円

綴じ方

最後に申請書、収入印紙を貼った紙、添付書類の順番で重ねて、左端二か所をホッチキスでとめます。そして、申請書と収入印紙を貼った紙に契印(割印)をします。なお、抵当権解除証書の原本の返還を希望する場合には、このコピーを申請書と一緒に綴じ、原本は綴じません。

登記識別情報

ところで、抵当権者から受領した権利証が、登記識別情報の場合、登記識別情報も添付書類として法務局に提出します。但し、登記識別情報は重要な情報ですので特別な扱いが要請されています。すなわち、登記識別情報は申請書と一緒に綴じずに、登記識別情報をコピーし、そのコピーだけを封筒に入れて提出します。また、登記識別情報はその目隠しシールを剝いだ上でコピーしなければなりません。そして、登記識別情報の原本は法務局に提出しなくてよいです。

なお、これは書面申請の場合の登記識別情報の提出方法です。電子証明書を利用したオンライン申請における登記識別情報の提出方法はこれとは異なります。オンライン申請の場合の取扱いの説明はここでは割愛します。

登記済証

これに対し、抵当権者から受領した権利証が、登記済証の場合にはこれをコピーして、封筒に入れる必要はありません。登記済証とは、抵当権設定契約証書に「登記済」の赤いハンコが押されている書類です。また、登記済証は申請書などと一緒に綴じません。なぜなら、登記済証は登記完了後に返却されるからです。

但し、登記済証が抵当権解除証書を兼ねる場合に、抵当権解除証書の原本の返還を希望するときは、この登記済証兼抵当権解除証書をコピーし、原本と一緒に提出します。

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