成年後見制度
相続人が認知症などにより判断能力を欠く状態で行った遺産分割協議は無効です。そこで、このような状況で遺産分割をするには成年後見制度を利用しなければなりません。
制度概要
成年後見制度とは判断能力を欠く方の財産保護を目的とした制度です。成年後見制度では判断能力を欠く方に成年後見人が付きます。この成年後見人が付けられた、判断能力を欠く方を成年被後見人といいます。
成年後見人は成年被後見人の財産管理をしたり、成年被後見人の代わりに契約手続きをしたりします。よって、遺産分割においても同様に成年後見人が成年被後見人に代わって遺産分割協議をします。
選任手続き
成年後見制度を利用するには家庭裁判所で成年後見開始審判の申立てをしなければなりません。
成年後見人の職務
成年後見制度は成年被後見人の財産を保護するための制度ですので、遺産分割の内容は成年被後見人の法定相続分を確保する内容のものでなければなりません。
もっとも、遺産分割の対象が不動産のみであり、その不動産に価値がなければ成年被後見人以外の特定の相続人が不動産を取得する旨の遺産分割協議が認められる可能性はあります。
遺産分割までの流れ
次に成年後見人が成年被後見人に代わって遺産分割協議をする流れを説明します。
手順1
成年後見開始審判の申立てをします。
手順2
成年後見開始の審判が下りると、成年後見人が選任されます。
手順3
成年後見人と他の相続人が遺産分割協議をします。
手順4
遺産分割完了後、成年後見人が家庭裁判所に遺産分割に関する報告をします。
以上が成年後見人が成年被後見人に代わって遺産分割協議をする流れです。
問題の所在
最後に成年後見制度の問題点を説明します。
成年後見制度は申立てに多くの時間と費用を要します。その上、親族が成年後見人に就任すれば成年後見人となった親族には多大な負担が発生します。また、弁護士や司法書士などの第三者が成年後見人に就任すればその者への報酬を成年被後見人の預貯金口座から支払います。
よって、遺産分割をするためだけに成年後見制度を利用することは認知症の方の親族に酷な要求です。
そこで、遺産分割を急ぐ必要がなく、認知症の相続人が高齢であれば認知症の相続人が亡くなるを待つ方法が現実的な対応です。