信託登記の概要
同時申請
信託登記抹消の登記は抹消の原因が生じた登記と同時にしなければなりません。
不動産登記法
(信託の登記の抹消)
第百四条 信託財産に属する不動産に関する権利が移転、変更又は消滅により信託財産に属しないこととなった場合における信託の登記の抹消の申請は、当該権利の移転の登記若しくは変更の登記又は当該権利の登記の抹消の申請と同時にしなければならない。
2 信託の登記の抹消は、受託者が単独で申請することができる。
登記申請書の書き方
登記の目的
登記の目的には「受託者の固有財産となった旨の登記及び信託登記抹消」と記入します。
原因
この登記は所有権変更登記と信託登記抹消登記を兼ねていますので、登記原因が2つあります。
そこで、所有権変更の原因には引き継がれた年月日及び「信託財産引継」と記入します。また、信託登記抹消の登記原因には「信託財産引継」と記入します。
所有権変更 年月日信託財産引継
信託登記抹消 信託財産引継
権利者
登記権利者の住所・氏名を記入します。受託者を登記権利者とします。また、氏名の前に「(信託抹消登記申請人)」と記入します。
権利者 (信託抹消登記申請人)B
※信託登記の抹消登記申請は受託者の単独申請です。
※所有権変更登記と信託登記抹消登記は同時にかつ一の申請情報をもってします。
義務者
登記義務者の住所・氏名を記入します。受益者を登記義務者とします。
義務者 A
添付情報
添付情報には「登記原因証明情報」、「印鑑登録証明書」、「住所証明情報」、及び「代理権限証明情報」と記入します。
※登記識別情報は不要です。
申請日及び管轄の法務局
申請日には登記申請書を法務局に提出する日を記入します。郵送の場合は発送日で構いません。
また、申請日の横に、登記を申請する管轄の法務局名を記入します。管轄の法務局とは不動産の所在地を管轄する法務局です。管轄の法務局はネットで「〇〇市 不動産登記」と検索すれば出てきます。
課税価格
課税価格にはその金額を「金○○円」と記入します。課税価格は登録免許税の算定の基礎となるものです。
課税価格は、申請する不動産の固定資産税評価額の合計額の下三桁を切り捨てた額です。例えば、土地の評価額が7,654,321円、建物の評価額が1,462,154円の場合、まず、これらを足します。すると合計額が9,116,475円になります。次に、この額の下三桁を切り捨てます。すると課税価格である9,116,000円が算定されます。これが課税価格の算定方法です。
固定資産税の評価額は固定資産税の納税通知書に記載されてあります。そして、固定資産税の評価額は直近年度のものです。
登録免許税
登録免許税にはその金額を金〇〇円と記入します。登録免許税の額は、課税価格の2%にあたる額の下二桁を切り捨てた額です。
例えば、課税価格が9,116,000円の場合、9,116,000円の2%にあたる額は182,320円です。
また、信託登記の抹消の登録免許税は不動産の個数×1,000円です。
最後に、この合計額の下二桁を切り捨てます。すると登録免許税の額である184,300円が算定されます。これが登録免許税の算定方法です。
登録免許税 金184,300円
移転分 金182,320円
抹消分 金 2,000円
不動産の表示
不動産の表示には、土地であれば所在・地番・地目・地積を、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積を記入します。これらは不動産の登記事項証明書のとおりに記入します。
また、いわゆる分譲マンションなどの区分建物の不動産の表示はこれらと異なります。
敷地権付区分建物の場合、始めに一棟の建物の表示として、一棟の建物の所在、建物の名称を記入します。次に専有部分の建物の表示として、専有部分の家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積を記入します。さらに敷地権の表示として、符号、所在及び地番、地目、地積、敷地権の種類、敷地権の割合を記入します。これらも不動産の登記事項証明書のとおりに記入します。
その他
以上が登記の申請書の書き方ですが、これらの事項以外に申請書に記入すべきことがある場合、申請書に「その他」欄を追加し、この欄に記入します。例えば、登記識別情報の通知を希望しない場合には、「その他」欄に「登記識別情報の通知を希望しない。」と記入します。
所有権移転登記が完了すると登記権利者には原則登記識別情報が交付されます。しかし、登記権利者が登記識別情報の交付を希望しない場合、その旨を登記の申請時に申し出ると、登記識別情報の交付はなされません。なお、登記識別情報の交付につき特別の事情がなければ、登記識別情報の交付を希望すればよいです。
綴じ方
最後に申請書、収入印紙を貼った紙、添付書類の順番で重ねて、左端二か所をホッチキスでとめます。そして、申請書と収入印紙を貼った紙に契印(割印)をします。なお、調停調書の原本の返還してもらうため、このコピーを申請書と一緒に綴じ、原本は綴じません。
不動産登記法
(権利の変更の登記等の特則)
第百四条の二 信託の併合又は分割により不動産に関する権利が一の信託の信託財産に属する財産から他の信託の信託財産に属する財産となった場合における当該権利に係る当該一の信託についての信託の登記の抹消及び当該他の信託についての信託の登記の申請は、信託の併合又は分割による権利の変更の登記の申請と同時にしなければならない。信託の併合又は分割以外の事由により不動産に関する権利が一の信託の信託財産に属する財産から受託者を同一とする他の信託の信託財産に属する財産となった場合も、同様とする。
2 信託財産に属する不動産についてする次の表の上欄に掲げる場合における権利の変更の登記(第九十八条第三項の登記を除く。)については、同表の中欄に掲げる者を登記権利者とし、同表の下欄に掲げる者を登記義務者とする。この場合において、受益者(信託管理人がある場合にあっては、信託管理人。以下この項において同じ。)については、第二十二条本文の規定は、適用しない。
一 不動産に関する権利が固有財産に属する財産から信託財産に属する財産となった場合
受益者
受託者
二 不動産に関する権利が信託財産に属する財産から固有財産に属する財産となった場合
受託者
受益者
三 不動産に関する権利が一の信託の信託財産に属する財産から他の信託の信託財産に属する財産となった場合
当該他の信託の受益者及び受託者
当該一の信託の受益者及び受託者
登録免許税法
(信託財産の登記等の課税の特例)
第七条 信託による財産権の移転の登記又は登録で次の各号のいずれかに該当するものについては、登録免許税を課さない。
一 委託者から受託者に信託のために財産を移す場合における財産権の移転の登記又は登録
二 信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である信託の信託財産を受託者から当該受益者(当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者である者に限る。)に移す場合における財産権の移転の登記又は登録
三 受託者の変更に伴い受託者であつた者から新たな受託者に信託財産を移す場合における財産権の移転の登記又は登録
2 信託の信託財産を受託者から受益者に移す場合であつて、かつ、当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である場合において、当該受益者が当該信託の効力が生じた時における委託者の相続人(当該委託者が合併により消滅した場合にあつては、当該合併後存続する法人又は当該合併により設立された法人)であるときは、当該信託による財産権の移転の登記又は登録を相続(当該受益者が当該存続する法人又は当該設立された法人である場合にあつては、合併)による財産権の移転の登記又は登録とみなして、この法律の規定を適用する。
令和6年1月10日付法務省民二第17号
事例
- 委託者A
- 受託者B(BはAの相続人の一人。)
- 受益者A
- 信託目録に次の記録がある。
①委託者Aが死亡した場合には、信託が終了する。
②委託者の死亡により信託が終了した場合の清算受託者及び残余財産帰属権利者は、信託終了時点における受託者とし、その者に給付引渡すものとする。 - 今般Aが死亡し、受益者がBになった。
※「受託者の固有財産となった旨の登記及び信託登記抹消」の登記の前に受益者をBとする信託登記の変更登記を申請します。
登記の目的
登記の目的には「受託者の固有財産となった旨の登記及び信託登記抹消」と記入します。
原因
この登記は所有権変更登記と信託登記抹消登記を兼ねていますので、登記原因が2つあります。
そこで、所有権変更の原因には引き継がれた年月日及び「信託財産引継」と記入します。また、信託登記抹消の登記原因には「信託財産引継」と記入します。
所有権変更 年月日信託財産引継
信託登記抹消 信託財産引継
権利者
登記権利者の住所・氏名を記入します。受託者を登記権利者とします。また、氏名の前に「(信託抹消登記申請人)」と記入します。
権利者 (信託抹消登記申請人)B
義務者
登記義務者の住所・氏名を記入します。受益者を登記義務者とします。
義務者 B
添付情報
添付情報には「登記原因証明情報」、「印鑑登録証明書」、「住所証明情報」、及び「代理権限証明情報」と記入します。
※登記識別情報は不要
申請日及び管轄の法務局
申請日には登記申請書を法務局に提出する日を記入します。郵送の場合は発送日で構いません。
また、申請日の横に、登記を申請する管轄の法務局名を記入します。管轄の法務局とは不動産の所在地を管轄する法務局です。管轄の法務局はネットで「〇〇市 不動産登記」と検索すれば出てきます。
課税価格
課税価格にはその金額を「金○○円」と記入します。課税価格は登録免許税の算定の基礎となるものです。
課税価格は、申請する不動産の固定資産税評価額の合計額の下三桁を切り捨てた額です。
ここでは信託の登記がされている不動産の所有権を、受益者である委託者の相続人へ帰属させる場合(登録免許税法7条2項)の課税価格の計算方法を説明します。
例えば、土地の評価額が7,654,321円、建物の評価額が1,462,154円の場合、まず、これらを足します。すると合計額が9,116,475円になります。次に、この額の下三桁を切り捨てます。すると課税価格である9,116,000円が算定されます。これが課税価格の算定方法です。固定資産税の評価額は固定資産税の納税通知書に記載されてあります。そして、固定資産税の評価額は直近年度のものです。
登録免許税
登録免許税にはその金額を金〇〇円と記入します。
ここでは信託の登記がされている不動産の所有権を、受益者である委託者の相続人へ帰属させる場合(登録免許税法7条2項)の登録免許税の計算方法を説明します。
登録免許税の額は、課税価格の0.4%にあたる額の下二桁を切り捨てた額です。例えば、課税価格が9,116,000円の場合、9,116,000円の0.4%にあたる額は36,464円です。
また、信託登記の抹消の登録免許税は不動産の個数×1,000円です。
そして、この合計額の下二桁を切り捨てます。すると登録免許税の額である38,400円が算定されます。これが登録免許税の算定方法です。(なお、この算定方法による算定の結果が1,000円未満となった場合、登録免許税は一律1,000円です。登録免許税は収入印紙で納付しますので、登録免許税の金額分の収入印紙を購入し、A4サイズの白紙に貼り付けます。)
登録免許税 金38,400円
移転分 金36,464円(登録免許税法第7条第2項)
抹消分 金 2,000円
登録免許税法第7条第2項
本登記が次のいずれにも該当するときは登録免許税法第7条第2項により所有権移転の登録免許税の税率は0.4%です。
- 信託財産を受託者から受益者に移す場合
- 信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である場合
- 受益者が信託の効力が生じた時における委託者の相続人であるとき
(信託財産の登記等の課税の特例)
第七条 信託による財産権の移転の登記又は登録で次の各号のいずれかに該当するものについては、登録免許税を課さない。
一 委託者から受託者に信託のために財産を移す場合における財産権の移転の登記又は登録
二 信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である信託の信託財産を受託者から当該受益者(当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者である者に限る。)に移す場合における財産権の移転の登記又は登録
三 受託者の変更に伴い受託者であつた者から新たな受託者に信託財産を移す場合における財産権の移転の登記又は登録
2 信託の信託財産を受託者から受益者に移す場合であつて、かつ、当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である場合において、当該受益者が当該信託の効力が生じた時における委託者の相続人(当該委託者が合併により消滅した場合にあつては、当該合併後存続する法人又は当該合併により設立された法人)であるときは、当該信託による財産権の移転の登記又は登録を相続(当該受益者が当該存続する法人又は当該設立された法人である場合にあつては、合併)による財産権の移転の登記又は登録とみなして、この法律の規定を適用する。