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家族信託

事業承継のための家族信託

事案

  • Aは甲株式会社の株主であり、代表取締役です。
  • Aには子Bがいます。
  • Aは高齢による判断能力低下を懸念し、近い将来Bに甲株式会社の事業を承継したいと考えています。
  • Bの経営能力は未知数のため、AはBに経営者としての素質(経営能力)があるかを見極めたいと考えています。
  • Bに経営能力がないと判断した場合には別の者に甲株式会社の事業を承継したいと考えています。

問題の所在

株式会社の事業を承継させることは、端的に言えば株式会社の株式を譲渡することです。株主が認知症などにより判断能力が著しく低下すれば株式を譲渡することはできません。そこで、今後加齢による判断能力の低下が懸念される株主は株式を信頼できる方に託すと安心です。

生前贈与

AがBに甲株式会社の事業を承継させる方法には甲株式会社の株式(以下、「本件株式」といいます。)を生前贈与する方法があります。

すなわち、ABで本件株式の贈与契約し、本件株式の権利をAからBへ移します。しかし、このような生前贈与すると本件株式の権利は完全にBに移転しますので、仮にBの経営能力に不安が生じた場合に経営権をBからAに戻すには再度AB間で株式の贈与契約をしなければなりません。また、株式を生前贈与すると受贈者に贈与税が課されます。

遺言

AがBに甲株式会社の事業を承継させる方法には遺言があります。

すなわち、Aが「本件株式をすべてBに相続させる」旨の遺言を作成します。しかし、遺言の効力は遺言者Aの死亡後に生じますので、Aは生前にBの経営能力の有無を判断できません。

後見制度

AがBに甲株式会社の事業を承継させる方法には、Aが認知症などにより判断能力を欠く状態になってから、Aの後見人を選任する方法があります。

すなわち、Aが判断能力を欠く状態なった後、家庭裁判所でAの後見開始の審判を申立てます。そして、Aの成年後見人とBで本件株式の売買契約をします。しかし、AからBへ株式譲渡する時点ではAには既に判断能力がありませんので、AはBの経営能力の有無を判断できません。

家族信託

そこで、AB間で次の内容の信託契約を締結します。

  1. Aは本件株式につきBと信託契約をする。
  2. 委託者及び受益者をAとする。
  3. 受託者をBとする。
  4. 委託者が死亡した場合には本件信託契約は終了する。
  5. 本件株式の議決権は委託者の指図に基づき受託者が行使する。
  6. Aの判断能力が欠けることが医師の診断書により証明されると、受託者は指図なくその裁量で議決権を行使できる。
  7. 残余財産は清算受託者に帰属する。

信託契約後の状態

本件信託契約締結後はAの管理下でBが甲株式会社を経営します。また、委託者兼受託者であるAは自己の判断で受託者Bを解任し(信託法58条1号)、新たな受託者を選任できます(信託法62条1項)。

また、Bは甲株式会社の株式の議決権を保有しますが、議決権の行使はAの指図に基づき行使されます。

さらに、Aが判断能力を欠く状態になれば受託者はAの指図なく議決権を行使でき、AからBへ甲株式会社の事業が承継されます。

委託者・受益者の相続

Aが死亡した場合、本件信託契約は終了します。そして、本件株式は本件信託契約終了時の受託者に帰属します。

例えば、本件信託契約後にAが死亡し、その時点でBが受託者であれば本件株式はBに帰属し、AからBに甲株式会社の事業が承継されます。

受託者の相続

Bが死亡した場合、Aは新たな受託者を選任できます(信託法62条1項)。また、Aが受託者を選任しない状態が一年間続くと信託契約は終了します(信託法163条3号)。

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