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家族信託

預貯金口座名義人が認知症の場合の取扱い

成年後見制度

預貯金口座名義人が認知症などにより判断能力を欠く状態になった場合、原則預貯金口座から金銭を引き出すことができません。また、金融機関がその事実を知れば預貯金口座を凍結することがあります。

このような状況で預貯金口座から金銭を引き出すには成年後見制度を利用しなければなりません。

制度概要

成年後見制度とは判断能力を欠く方の財産保護を目的とした制度です。成年後見制度では判断能力を欠く方に成年後見人が付きます。この成年後見人が付けられた、判断能力を欠く方を成年被後見人といいます。

成年後見人は成年被後見人の財産管理をしたり、成年被後見人の代わりに契約手続きをしたりします。

選任手続き

成年後見制度を利用するには家庭裁判所で成年後見開始審判の申立てをしなければなりません。

成年後見人の職務

成年後見人は成年被後見人の財産管理につき包括的な代理権を有します。もっとも、成年後見制度は成年被後見人の財産を保護するための制度ですので、成年被後見人の財産につき投資的な運用は認められません。投資的な運用とは例えば成年被後見人の金銭で株式を購入することです。

成年後見人による管理までの流れ

次に成年後見人が成年被後見人の預貯金を管理するまでの流れを説明します。


  • 手順1

    成年後見開始審判の申立てをします。


  • 手順2

    成年後見開始の審判が下りると、成年後見人が選任されます。


  • 手順3

    成年後見人が金融機関で成年後見人の管理専用の預貯金口座を開設し、成年被後見人の従前の預貯金口座から金銭を移動します。


  • 手順4

    成年後見人は成年被後見人の財産管理について定期的に家庭裁判所に報告します。


以上が成年後見人が成年被後見人の預貯金を管理するまでの流れです。

親族による預貯金の引き出し

最後に親族による預貯金の引き出しについて説明します。

問題の所在

成年後見制度は申立てに多くの時間と費用を要します。その上、親族が成年後見人に就任すれば成年後見人となった親族には多大な負担が発生します。また、弁護士や司法書士などの第三者が成年後見人に就任すればその者への報酬を成年被後見人の預貯金口座から支払います。

他方、認知症の方の親族が認知症の方の預貯金口座から金銭を引き出す場合とは認知症の方の医療費、介護費、生活費、家賃などの支払いのためであることが多いと思われます。よって、このような場合にまで成年後見制度の利用を強制することは親族に酷です。

金融機関の対応

そこで、全国銀行協会は成年後見制度の利用を原則としつつも、一定の場合には例外的に親族による認知症の方の預貯金の引き出しを認めています。

判断能力の喪失の判断

親族による引き出しを認めるにはまず預貯金名義人が判断能力を喪失していると認められなければなりません。具体的には精神科医の診断書の提出が最も適しているといえます。また、診断書の提出だけでなく、金融機関の職員による認知症の方との面談や担当医からのヒアリングも重要な判断要素となります。

本人の利益に適合

次に親族による引き出しが認知症の方の利益になることが明らかでなければなりません。具体的には医療費や介護費などの支払いのためであることが必要です。但し、どのような使途の場合に認知症の方の利益になるかはケースバイケースです。

投資信託等の金融商品

また、親族が認知症の方の預貯金口座から金銭を引き出すのではなく、投資信託等の金融商品を解約して金銭にかえることも想定できます。

しかし、投資信託等の金融商品は価格変動があり、原状回復が困難です。よって、親族による投資信託等の金融商品の解約は預貯金の引き出しより認められにくいです。

窓口相談

以上が全国銀行協会の指針ですが、実際に引き出しができるかは取引銀行の判断です。そこで、その際は次のもの準備して取引銀行の窓口で相談します。

  • 通帳
  • キャッシュカード
  • 銀行印
  • 親族の本人確認書類
  • 口座名義人と親族の関係を証明する戸籍謄本
  • 医療費や介護費などの請求書

以上が親族による預貯金の引き出しの説明です。

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