所有権登記名義人住所変更登記とは
所有権登記名義人住所変更登記とは、不動産の登記記録に所有者として登記されている者の住所に変更があった場合に、かかる変更を登記記録に反映させるための登記です。登記記録とは不動産の登記事項証明書の中の情報です。
なお、銀行などの金融機関の抵当権の登記がある場合、その抵当権の債務者として登記されている者の住所に変更があったとき、かかる変更を登記記録に反映させるための登記は所有権登記名義人住所変更登記ではありません。
所有権登記名義人住所変更登記申請の流れ
登記事項証明書
まず法務局で、所有権登記名義人住所変更登記が必要だと思われる不動産の登記事項証明書を取得します。法務局は登記事項証明書が取得できる法務局であればどこの法務局でもよいです。そして、取得した登記事項証明書中の自分の住所を確認し、所有権登記名義人住所変更登記が必要か確認します。
添付書類
所有権登記名義人住所変更登記が必要であれば、登記に必要な添付書類を準備します。添付書類については後で説明します。
申請書
添付書類が揃いましたら、法務局に提出する申請書を作成します。申請書のひな形はネットで「法務省 所有権登記名義人住所変更登記」で検索すると、法務省のページからダウンロードできます。
提出
最後に申請書、収入印紙及び添付書類を管轄法務局に提出します。管轄法務局が遠方であれば郵送でも構いません。
添付書類
所有権登記名義人住所変更登記においては、登記記録に記載されている住所と現在の住所の変遷がわかる公的な証明書が必要です。そのため、添付書類として住民票を取得します。もっとも、住民票には前住所の記載しかないので、登記記録の住所から2回以上住所が変更されている場合には住民票だけでは対応できません。この場合には戸籍の附票を取得します。戸籍の附票とは戸籍に付随して作成され、住所の変遷がわかるもので、本籍地の市区町村で取得できます。
もし、戸籍の附票で住所の変遷が証明できなければ、さらに戸籍の改製原附票を取得します。改製原附票の詳細な説明は割愛しますが、改製原附票は原則戸籍の附票と同じ窓口で請求できます。もっとも、市区町村によっては改製原附票が廃棄済みで取得できない場合があります。
戸籍の改製原附票を取得しても住所の変遷が証明できない場合や、戸籍の改製原附票が取得できず住所の変遷が証明できない場合には、所有権登記名義人住所変更登記の対象となる不動産の登記済証及びそのコピーを添付書類として法務局に提出します。
戸籍の附票や改製原附票などで住所の変遷が証明できず、かつ登記済証がない場合には固定資産税の納税通知書などを添付書類として提出することになります。
申請書の書き方
申請書はA4サイズで作成します。また、収入印紙を貼り付けるためのA4の白紙1枚も準備します。申請書に記載すべき事項は次の通りです。
登記の目的
登記の目的には「所有権登記名義人住所変更」と記入します。法務省のページの記載例では「1番所有権登記名義人住所変更」と記載されてありますが、「1番」などの「〇番」の記載はなくてもよいです。
登記の目的 | 所有権登記名義人住所変更 |
原因
原因には住所を移転した日付及び「住所移転」と記入します。住所を移転した日付は住民票や戸籍の附票に記載されてあります。なお、この日付は市区町村に住所変更を届け出た日付ではなく、実際に新住所に移転した日付です。また、登記記録の住所から複数回住所が移転している場合には最終の移転日のみ記入します。住所変更ではなく、住居表示実施の場合には「住居表示実施」と記入します。
原因 | 令和2年4月1日住所移転 |
変更後の事項
変更後の事項には現住所を記入します。現住所は住民票や戸籍の附票のとおり正確に記入します。住民票と戸籍の附票で住所の表記が異なる場合は住民票の住所を記入します。登記記録の住所から複数回住所が移転している場合には現住所のみ記入します。
変更後の事項 | 島根県松江市殿町一丁目1番1号 |
また、不動産が夫婦や親子などで共有の場合、現住所の前に「共有者〇〇の住所」と記入します。この○○には所有権登記名義人住所変更登記が必要な者の氏名が入ります。
変更後の事項 | 共有者田中太郎の住所 島根県松江市殿町一丁目1番1号 |
申請人
申請人には所有権登記名義人住所変更登記が必要な者の住所・氏名・連絡先を記入し、認印を押印します。
申請人 | 島根県松江市殿町一丁目1番1号 田中太郎 ㊞ 電話番号 090-0000-0000 |
添付書類
添付書類には「登記原因証明情報」と記入します。
添付書類 | 登記原因証明情報 |
不動産の表示
不動産の表示には、土地であれば所在・地番・地目・地積を、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積を記入します。これらは不動産の登記事項証明書のとおりに記入します。なお、不動産の表示は固定資産税の納税通知書の表記のとおりに記入すべきではありません。なぜなら、固定資産税の納税通知書の表記は登記記録と必ずしも一致しないからです。
所在 地番 地目 地積 |
松江市殿町一丁目 11番 宅地 100・00平方メートル |
所在 家屋番号 種類 構造 床面積 |
松江市殿町一丁目11番地 11番 居宅 木造かわらぶき2階建 1階 40・00平方メートル 2階 30・00平方メートル |
申請日及び管轄の法務局
申請日には登記申請書を法務局に提出する日を記入します。郵送の場合は発送日で構いません。
また、管轄の法務局には、管轄の法務局名を記入します。管轄の法務局とは不動産の所在地を管轄する法務局です。管轄の法務局はネットで「〇〇市 不動産登記」と検索すれば出てきます。
令和4年8月1日申請 | 松江地方法務局 |
登録免許税
登録免許税には登録免許税の額を金〇〇円と記入します。登録免許税の金額は不動産の個数×1,000円です。登録免許税は収入印紙で納付しますので、登録免許税の金額分の収入印紙を購入し、収入印紙は白紙に貼り付けます。
登録免許税 | 金2,000円 |
綴じ方
最後に申請書、収入印紙を貼った紙、添付書類の順番で重ねて、左端二か所をホッチキスでとめます。そして、申請書と収入印紙を貼った紙に契印(割印)をします。
共有の場合の申請書
不動産を共有している場合に、その共有者の住所を変更した場合は原則共有者ごとに住所変更登記を申請します。すなわち、不動産をABで共有している場合、ABがそれぞれの住所変更にかかる登記申請書を作成し、登記を申請します。
もっとも、一定の場合には共有者ごとではなく、共有者一緒にまとめて申請書を作成し、登記を申請することができます。これにより登記の件数が減り、登録免許税を節税できます。
そして、この「一定の場合」とは次をいずれも満たす場合です。
- 共有者の住所変更後の住民票の住所が同じである。
- 共有者の住所変更後の住民票の住定年月日が同じである。
登記申請書の書き方
登記の目的には「所有権登記名義人住所変更」と記入します。
原因には「年月日住所移転」と記入します。この日付は住民票の住定年月日です。
変更後の事項には「共有者A及びBの住所 ○○」と記入します。○○には変更後の住所を記入します。
登記の目的 所有権登記名義人住所変更
原 因 年月日住所移転
変更後の事項 共有者A及びBの住所 ○○
申 請 人 A B
登録免許税 不動産の個数×1000円