前提
ここでは法定相続人全員が遺産分割協議をして相続登記を申請する場合にかかる費用を説明します。
登録免許税
相続登記は管轄法務局に申請しますが、その際に登録免許税という税金を納付しなければなりません。
登録免許税の額は原則、相続登記を申請する不動産の直近の固定資産税評価額の0.4%です。例えば固定資産税評価額が1,000万円の土地の相続登記の登録免許税は4万円です。
固定資産税評価額は固定資産税の納税通知書に記載されてあります。
また、申請する登記の内容や固定資産税評価額によっては減税措置が適用されることがあります。
被相続人の戸籍
法定相続人全員が遺産分割協議をして相続登記を申請する場合には被相続人の「出生から死亡までの戸籍」を取得します。
この「出生から死亡までの戸籍」は戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本で構成されます。
そして、これらが何通発行されるかは被相続人ごとに異なります。そのため、この費用は戸籍を実際に取得してみなければわかりません。
なお、法定相続人が第三順位の相続人の場合は被相続人の父母の「出生から死亡までの戸籍」も必要です。
被相続人の戸籍の附票
被相続人の戸籍の附票謄本を取得する費用がかかります。
相続人の戸籍
法定相続人全員の戸籍謄本(抄本)各1通を取得する費用がかかります。
相続人の印鑑登録証明書
法定相続人全員の印鑑登録証明書各1通を取得する費用がかかります。
不動産を取得する相続人の住民票
遺産分割協議の結果、不動産を取得することになった法定相続人の住民票抄本1通を取得する費用がかかります。
評価証明書
相続登記を申請する不動産の固定資産税評価額を証明する書類の取得費用がかかります。
これにかえて、固定資産税の納税通知書を利用した場合はこの取得費用はかかりません。ただし、相続登記は固定資産税の名寄帳を取得して申請することが望ましいです。
不動産の登記事項証明書
相続登記を申請する不動産の登記事項証明書を取得する費用がかかります。
これにかえて、登記情報提供サービスによって登記情報を取得する場合はその費用がかかります。
郵送料金
相続登記を申請する法務局に申請書と添付書類を郵送する場合や、登記識別情報を郵送で受け取る場合はその郵送料金がかかります。
以上が、法定相続人全員が遺産分割協議をして相続登記を申請する場合にかかる費用です。
司法書士報酬
次に相続登記を司法書士に依頼する場合の司法書士報酬について説明します。
司法書士報酬は司法書士によって異なります。
ここでは司法書士報酬の増減基準の一例を説明します。なお、この基準例はすべての司法書士にあてはまるものではありません。
公正証書遺言
公正証書遺言で相続登記を申請する場合は、法定相続人全員で遺産分割協議をして相続登記を申請する場合より報酬が安いです。
自筆証書遺言
自筆証書遺言で相続登記を申請する場合は、法定相続人全員で遺産分割協議をして相続登記を申請する場合より報酬が安いとは限りません。
例えば、法定相続人全員の同意が容易に得られるならば、自筆証書遺言を使用せず法定相続人全員で遺言の内容のとおりの遺産分割協議をして相続登記をする方が安くなることがあります。
数次相続
数次相続が発生している場合は数次相続が発生していない場合に比べて報酬が高いです。
代襲相続
代襲相続が発生している場合は代襲相続が発生していない場合に比べて報酬が高いです。
第三順位の相続人
法定相続人が第三順位の相続人の場合、法定相続人が第一順位の相続人の場合よりも報酬が高いです。
疎遠の相続人
法定相続人の中に疎遠の相続人がいる場合はその人の対応次第で報酬が大きくかわります。
未成年者
法定相続人の中に未成年者とその親権者がいる場合は相続登記の前提として特別代理人の選任手続きが必要です。
そのため、相続登記の費用に加えてこの手続き費用もかかります。
不動産の数
相続登記を申請する不動産が多いほど報酬は高くなります。
固定資産税評価額
相続登記を申請する不動産の固定資産税評価額が高いほど報酬は高くなります。
被相続人の住所
被相続人の「不動産の登記記録上の住所」と、被相続人の「戸籍の附票・住民票の除票の住所」が一致しない場合は、一致する場合に比べて報酬が高いです。
また、一致しない場合に不動産の登記済証を持っているか否かで報酬がかわります。
法定相続情報一覧図
法定相続情報一覧図を保有している場合は、そうでない場合に比べて報酬が安いです。
戸籍の取得
相続登記に必要な戸籍などを自分で揃えた場合は、司法書士に依頼して揃えた場合よりも報酬が安いです。