農地
農地は、農地法上、「耕作の目的に供される土地」と定義されます(農地法2条1項)。
要するに、農地とは「耕作される土地」のことです。
そして、「耕作」とは大まかに言うと作物を栽培することです。
農地の例として、田・畑・果樹園があります。
また、休耕地でも農地として利用が再開できる状態であれば「農地」に該当します。
無断転用
農地を無断で駐車場等に転用することは、農地法違反の行為です。
建物建築の際には諸々の理由により、農地の無断転用は考えにくいです。
しかし、駐車場で利用する場合や個人間で貸し借りする場合に無断転用が多く存在します。
これらを放置すれば、いずれこの違法状態を是正しなければなりません。
具体的には無断転用した農地の現状回復です。
また、農地法では、農地の無断転用は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金とされています(農地法64条)。
もっとも、農地の無断転用はすぐに発覚しません。
よって、このような罰則を受ける状況になる頃には、無断転用した当事者は亡くなっているでしょう。
そうなれば、後の代に迷惑がかかることになります。
譲渡
「譲渡」とは、意思に基づいて自己の権利を相手に移すことです。
譲渡の例として、売買・贈与・交換があります。
これに対し、「意思に基づかない」で、自己の権利を相手に移すことは譲渡ではありません。
例えば、相続です。相続は「死亡」によって開始します。
「相続させるという意思」に基づいて、相手に権利を移すのではありません。
そして、相続により農地を取得するのに後述の農地法の許可は不要です。
許可制度
農地の適正な管理をするために農地の処分管理につき、農地法で規制がされています。
特に農地法上の許可が絡むと手続きが煩雑になります。
また、農地法の許可を扱う専門家は行政書士です。
農地法3条許可
農地を「農地のまま」譲渡する場合は農地法3条の許可が必要です。
ここで、農地を農業従事者でない者が取得すれば、農地が適正に管理されない危険性があります。
そこで、農地法3条により農地を取得する場合、農地を譲り受ける者は原則農業従事者でなければなりません。
そして、農地法の許可なしに、農地を譲渡してもその譲渡は無効です。
また、譲渡の登記もできません。
農地法4条許可
農地を、農地以外に転用する場合は、農地法4条の許可が必要です。
例えば、農地を駐車場や建物敷地にする場合です。
但し、全ての農地で転用が可能ではありません。
農地には転用が認められるものと認められないものがあります。
市街化区域では農地転用が認められ易く、市街化調整区域では認められ難いです。
農地法5条許可
農地を譲渡し、更に譲り受けた人が農地を転用する場合は、農地法5条の許可が必要です。
ここで、下記のいずれかの方法をとれば、農地法5条許可という仕組みは不要とも思えます。
- 農地法4条の許可を受け、農地転用した上で譲渡する。
- 農地法3条の許可を受け、農地を譲り受けた上で、農地法4条の許可を受け、農地転用する。
それにも関わらず農地法5条の許可制度が存在するのは、農地転用の審査において、「許可を受ける者 」と「許可の対象の土地」の結びつきが重要となる場合があるからです。
例えば、農地転用が原則できない土地でも、分家住宅や農業用倉庫の建築であれば例外的に農地転用が可能な場合があります。
その場合、譲渡人を許可の審査対象とすれば、許可要件を満たさないが、譲受人を許可の審査対象とすれば許可要件を満たすことがあります。
このような場合に農地法5条の存在意義があります。