松江相続相談室は島根県松江市、安来市、出雲市、雲南市、鳥取県米子市、境港市を中心に相続に関するご相談を承っています。

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相続

相続財産清算人

相続財産法人

相続財産清算人とは相続財産法人を管理・清算する人です。

はじめに相続財産法人について説明します。

ある人が死亡し、その人(被相続人)の「相続人のあることが明らかでないとき」は、被相続人の財産全てが一つの集合体として扱われ、この集合体は法人となります。そして、この法人化された被相続人の財産の集合体を「相続財産法人」といいます。

「財産全てが一つの集合体として扱われる」とは、例えば、被相続人の「相続人のあることが明らかでないとき」に、被相続人が生前に債務を負っていた場合は相続財産法人からこの債務を弁済します。また、被相続人の財産から収益が発生する場合はこの収益は順次相続財産法人に組み込まれます。

相続人のあることが明らかでないとき

次に相続財産法人が成立する場合を説明します。既述のとおり、相続財産法人が成立するのは被相続人の「相続人のあることが明らかでないとき」です。

そして、この「相続人のあることが明らかでないとき」とは主に次の場合です。

  • 法定相続人がいないとき
  • 法定相続人全員が相続放棄をしたとき

このうち、後者の「法定相続人全員が相続放棄をしたとき」とは第一順位の相続人、第二順位の相続人、第三順位の相続人及び配偶者の全員が相続放棄をした場合です。

なお、ある人が死亡し、その法定相続人がいない場合は、その人に相続が発生したとはいえないため、その人のことを「被相続人」と呼ぶことには違和感がありますが、ここでは便宜的に「被相続人」と呼びます。

(ところで、第二順位の相続人は第一順位の相続人全員が相続放棄をした後でなければ、第三順位の相続人は第一順位及び第二順位の相続人全員が相続放棄をした後でなければ相続人になりません。

そのため、第二順位の相続人は第一順位の相続人全員の相続放棄が完了した後に、第三順位の相続人は第一順位及び第二順位の相続人全員の相続放棄が完了した後に相続放棄をします。)

(相続財産法人の成立)
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

相続財産清算人

以上の場合に、相続財産法人は成立しますが、相続財産法人は概念上のものに過ぎません。

そこで、相続財産法人を構成する財産を実際に管理・清算する人が必要です。

この人を「相続財産清算人」といいます。相続財産清算人は被相続人の財産を売却したり、被相続人の債権者に債務を弁済したりします。

ここで注意すべきことは、相続財産法人は被相続人の「相続人のあることが明らかでないとき」に自動的に成立しますが、相続財産清算人は自動的に選任されないことです。すなわち、相続財産清算人は利害関係人などの申立てに基づいて家庭裁判所によって選任されます。

例えば、被相続人が生前所有していた不動産があり、その被相続人の「相続人のあることが明らかでないとき」には被相続人の不動産は自動的に相続財産法人に組み込まれます。

しかし、相続財産法人に組み込まれた不動産を購入するには、利害関係人などが相続財産清算人の選任を申し立てた上で、選任された相続財産清算人と、不動産の購入希望者で不動産の売買契約を締結しなければなりません。

このよう方法などで相続財産清算人は相続財産法人を構成する財産を順次清算していきます。そして、清算をしても相続財産法人を構成する財産が余る場合は、その全部又は一部は被相続人の特別縁故者へ給付されることがあります。

そして、特別縁故者がいない場合や、特別縁故者への給付をしても相続財産法人を構成する財産が余る場合は、相続財産法人を構成する財産は全て国庫に帰属します。

また、相続財産清算人による清算の結果、管理・清算すべき相続財産法人を構成する財産がなくなった場合は家庭裁判所は相続財産清算人の選任を取り消します。

予納金

次に相続財産清算人の選任申立てにかかる予納金について説明します。

既述のとおり、相続財産清算人は利害関係人などの申立てに基づいて家庭裁判所によって選任されます。

そして、この申立て時に相続財産法人を構成する財産の中に、現金や預貯金がない場合や、これらが少額の場合は原則家庭裁判所に予納金を納付しなければなりません。

この予納金は主に相続財産清算人への報酬に充てられます。

なお、相続財産清算人になるための資格はありませんが、専門知識が必要ですので通常弁護士か司法書士が選任されます。

相続財産清算人の仕事

最後に相続財産清算人の仕事を簡単に説明します。

相続財産清算人の主な仕事は文字通り相続財産法人を構成する財産を清算することです。

すなわち、被相続人にプラスの財産があればこれを回収・処分などし、マイナスの財産があればこれをなくします。

(また、相続財産清算人の最初の仕事は官報公告と債権者への個別催告です。そして、この官報公告後一定期間経過しますと、相続財産清算人が把握していない債権者は弁済から除かれます。)

被相続人の預貯金債権

被相続人の預貯金口座は解約し、相続財産清算人が新たに開設した相続財産法人専用の預貯金口座に金銭を移動します。

また、相続財産清算人は被相続人の住所地の最寄りの金融機関に対して被相続人の預貯金口座がないか照会をかけることがあります。

被相続人の有価証券

被相続人の有価証券は原則売却して現金化し、相続財産法人専用の預貯金口座に金銭を移動します。

被相続人の不動産

被相続人の不動産は原則売却して現金化し、相続財産法人専用の預貯金口座に金銭を移動します。

しかし、相続財産法人を構成する不動産の中には、価値がないものや、建物の解体費用などの発生によりマイナスの財産であるものがあります。このような不動産については無償に近い金額で売却することがあります。

なお、被相続人の不動産に係る固定資産税は相続財産法人から捻出し弁済します。

相続財産法人を構成する財産をもって、固定資産税を支払うことができない場合は相続財産清算人が管轄市町村にその旨を連絡し、管轄市町村の対応を待ちます。

(その結果、市町村が固定資産税の回収を断念することがあります。)

相続財産清算人の選任申立ての必要書類

申立書

申立書はネットで「相続財産清算人 申立書」と検索すると家庭裁判所のWEBサイトでダウンロードできます。

収入印紙

収入印紙800円分を準備します。

予納郵券

予納郵券の額面・枚数は管轄の家庭裁判所によって異なります。

戸籍謄本

申立てに必要な戸籍謄本は次のものです。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本

また、相続人全員が相続放棄をしている場合には相続人の戸籍謄本(抄本)や相続放棄の証明書が必要な場合があります。

利害関係を証明する書類

被相続人の債権者が申立てする場合には借用証書などを提出します。

相続放棄をした者が申立てする場合には戸籍謄本を添付します。

不動産登記

所有権登記名義人氏名変更

登記の目的 所有権登記名義人氏名変更
原   因 年月日相続人不存在
変更後の事項
登記名義人 亡〇〇相続財産
申 請 人 亡〇〇相続財産清算人 △△※
登録免許税 1,000円×不動産の個数

※相続財産清算人の氏名を記入する。

登記原因証明情報は選任審判書のみである。

民法第958条の2の審判

登記の目的 所有権移転
原   因 年月日民法第958条の2の審判
権 利 者 ▢▢
義 務 者 亡〇〇相続財産清算人 △△※
課税価格
登録免許税 

※相続財産清算人の氏名を記入する。司法書士が代理する場合は「亡〇〇相続財産」と記入する。

登記原因証明情報の一部として審判書を添付する。

代理権限証明情報の一部として選任審判書を添付する。

特別縁故者不存在確定

登記の目的 ○○相続財産持分全部移転
原   因 年月日特別縁故者不存在確定
権 利 者 持分 分の ▢▢
義 務 者 亡〇〇相続財産清算人 △△※
課税価格
登録免許税 

※相続財産清算人の氏名を記入する。司法書士が代理する場合は「亡〇〇相続財産」と記入する。

登記原因証明情報の内容は事案ごとに異なるため説明は割愛する。

代理権限証明情報の一部として選任審判書を添付する。

相続財産清算人の任意売却

権限外行為許可

相続財産清算人が相続財産法人を構成する不動産を任意売却する場合には家庭裁判所の許可が必要である。

そして、この許可書に記載される買主の住所・氏名に誤植があれば更正決定書を発行してもらう。

所有権登記名義人表示変更登記

任意売却による所有権移転登記の前提として所有権登記名義人氏名変更登記が必要である。

また、被相続人の死亡時の住所と、登記記録上の住所が一致しない場合には前提として所有権登記名義人住所変更登記が必要である。

登記申請書

登記の目的 所有権移転
原   因 年月日売買
権 利 者 ▢▢
義 務 者 亡〇〇相続財産清算人 △△※
添付情報  登記原因証明情報 印鑑証明書 住所証明情報 代理権限証明情報 許可証明情報
課税価格
登録免許税 

※相続財産清算人の氏名を記入する。司法書士が代理する場合は「亡〇〇相続財産」と記入する。

添付情報

  1. 登記原因証明情報は報告書形式の登記原因証明情報を用いるのが一般的である。
  2. 登記識別情報は不要である。
  3. 相続財産清算人の印鑑証明書の住所氏名と、選任審判書の住所氏名が一致する必要がある。
  4. 代理権限証明情報の一部として選任審判書を添付する。
  5. 許可証明情報として許可書を添付する。

選任審判書に、法律事務所や司法書士事務所の事務所所在地が記載されている場合には、市町村発行の印鑑証明書に代えて所属会発行の職印証明書で使用できると考えられる(法務局要確認)。

また、市町村発行の印鑑証明書を提出する場合で、選任審判書に事務所所在地が記載されてあるときには所属会発行の登録事項証明書(氏名、住所、事務所所在地記載のもの)を添付する。

(相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告)
第九百二十七条 限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
2 前項の規定による公告には、相続債権者及び受遺者がその期間内に申出をしないときは弁済から除斥されるべき旨を付記しなければならない。ただし、限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者を除斥することができない。
3 限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者には、各別にその申出の催告をしなければならない。
4 第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。

(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条 第九百五十二条第二項の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、二箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない。
2 第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。

(相続財産の保存)
第八百九十七条の二 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第九百五十二条第一項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。
2 第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

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