遺産分割調停とは
遺産分割とは
遺産分割とは遺産の最終的な帰属先を決めることです。
遺産分割が有効に成立するには、「遺産の範囲」及び「相続人」が確定した上で協議し、相続人全員が合意する必要があります。
そして、相続人間で合意がなされない場合、遺産分割協議は無効です。
すなわち、預貯金の解約や不動産の名義変更ができません。
そこで、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。
調停とは
調停とは、裁判官と民間人で構成される調停委員が、当事者の意見や事情を考慮して助言をし、間に入ることで円滑に争いを解決する手続きです。
調停は当事者全員の合意がなければ成立しません。
そこで、第三者が間に入ることで妥当な落としどころを見つけ、早期に紛争を解決するというメリットがあります。
遺産の範囲
遺産の範囲が確定していない場合は、遺産分割調停をする前に、別途裁判等で遺産の範囲を確定する必要があります。
例えば、相続人の一人が相続財産を隠し持っている場合が挙げられます。
相続人確定
相続人が確定していない場合は、遺産分割調停をする前に、別途裁判等で相続人を確定する必要があります。
例えば、被相続人に養子がいる場合で、養子縁組の効力を争うときが挙げられます。
相続人全員の合意
遺産分割協議は相続人全員が揃わなければできません。
特に下記の場合に問題となります。
行方不明
相続人の一部が行方不明の場合は、遺産分割協議ができません。
この場合は裁判所で行方不明者の代理人を選任し、その代理人が遺産分割協議をします。
この代理人を「不在者財産管理人」と言います。不在者財産管理人は通常弁護士の中から家庭裁判所が選任します。
また、事故で行方不明の場合や、長期間行方不明の場合は「失踪宣告」という方法で、行方不明者を「死亡扱い」とする手続きもあります。
成年後見
相続人の一部が、認知症や重い病気を患っている場合、遺産分割協議ができません。
この場合は家庭裁判所で成年後見人を選任し、その代理人が遺産分割協議をします。
もっとも、成年後見人になる者に対する負担は大きく、親族が後見人となる場合は慎重に検討することが必要です。
また、弁護士等の専門家が成年後見人になれば毎月報酬が発生します。
未成年
相続人の中に未成年者とその親権者がいる場合、遺産分割協ができません。
この場合は裁判所で特別代理人を選任し、その代理人が遺産分割協議をします。
相続分の譲渡
遺産分割調停は相続人全員が出席しなければ成立しません。
しかし、相続人の中には「遺産を要らないから、調停に参加したくない」と考える方もおられます。
その場合は相続分を譲渡することで、調停手続きに関わらないようにすることができます。
もっとも、相続分の譲渡は遺産分割協議と違い、不動産登記において注意すべきことがあります。
よって、不動産の遺産分割調停をする場合は事前に司法書士と打合せすることをおすすめします。
遺産分割調停の流れ
step.1
調停申立書を作成し、添付書類を添えた上で、裁判所に提出する。
step.2
裁判所から調停の期日が指定されるので、その日に裁判所に出廷する。
step.3
遺産分割協議が合意するまで、裁判所に出廷し、調停する。
step.4
調停が成立すると、調停調書が作成され、終了する。
調停が不成立の場合、家事審判に移行する。
遺産分割調停の申立て
申立人
- 共同相続人
- 包括受遺者
- 相続分譲受人
申立先
調停をする相手方の住所地を管轄する家庭裁判所。
相手方が複数いる場合はいずれかの住所地を管轄する家庭裁判所。
費用
- 収入印紙1200円(被相続人1人につき)
- 予納郵券数千円(相続人の数に比例)
- 専門家依頼の場合はその報酬
必要書類
- 相続関係を証する戸籍
- 遺産を確認する資料(不動産登記事項証明書、不動産評価証明書、預貯金の残高証明書等)
遺産分割調停不成立
遺産分割調停が不成立の場合、審判手続きに移行します。
遺産分割審判では遺産分割調停の資料等を基に裁判官が遺産分割の方法を決定します。
遺産分割調停と遺産分割審判は、いずれを先に申し立てても法律上は問題はありません。
しかし、遺産分割協議は当事者の意向が重要なものですので、まずは遺産分割調停を申し立てるのが円滑な解決のための妥当な手段でしょう。