選択
遺言を作成する場合、自筆証書遺言と公正証書遺言のいずれかを選択することが大半です。
自筆証書遺言とは遺言者が便せんなどに書き記す遺言です。公正証書遺言は公証役場で作成する遺言です。ここでは両者の違いを簡単に説明します。
なお、法務局での遺言書保管制度の対象となる遺言は自筆証書遺言です。
作成時の手続き
自筆証書遺言は作成時に手間と費用がかかりません。
これに対し公正証書遺言は作成時に手間と費用がかかります。すなわち、公正証書遺言は公証役場にいって作成する遺言ですので公証役場とのやりとりや公証役場に支払う手数料が発生します。この手数料は最低でも数万円かかります。
これが遺言作成時の手間と費用の違いです。
もっとも、遺言を作成する際には「遺言作成時」の手間と費用だけでなく、「相続手続き」の際の手間と費用も考慮しなければなりません。「相続手続き」とは遺言者の死亡後の遺言を使用した各種の手続きのことをいいます。相続手続きは遺言者ではなく、遺言により財産を取得した者が行う手続きです。
相続手続き
そこで、次に相続手続きの際の両者の違いを説明します。
検認
自筆証書遺言を相続手続きで使用するには遺言者の死亡後に家庭裁判所で検認を受けなければなりません。すなわち、遺言によって財産を取得した者は家庭裁判所に検認を申し立てることになります。
そして、検認を申し立てるには申立書を作成したり、遺言者の戸籍謄本などを取集したりしなければなりません。
これに対し、公正証書遺言を相続手続きで使用するには検認は不要です。
つまり、自筆証書遺言は作成は楽ですが、相続手続きが大変で、公正証書遺言は作成は大変ですが、相続手続きが楽です。
相続人への周知
また、検認においては遺言者の相続人全員に遺言内容を確認する機会が保障されています。
これに対し、公正証書遺言は検認が不要ですので、相続人全員に遺言内容を確認する機会は保障されていません。
紛争防止
最後に自筆証書遺言と公正証書遺言の最も重要な違いを説明します。それは遺言に関する紛争の回避です。
自筆証書遺言は遺言者だけで作成できますが、公正証書遺言は公証人と証人二人の関与の下で作成されます。
そのため、遺言者の死亡後に「遺言が無効だ」などと相続人が主張しても、公正証書遺言の場合には自筆証書遺言の場合に比べてこのような主張は格段に認められにくいです。