信託登記の概要
同時申請
信託登記はその信託に係る所有権移転登記と同時にしなければなりません。
不動産登記法
受託者
信託登記と同時になされる所有権移転登記は信託のためになされるものですので、登記記録において権利者は「所有者」ではなく「受託者」と記録されます。
登記申請書の書き方
登記の目的
登記の目的には「所有権移転及び信託」と記入します。
受託者が2名以上の場合には「所有権移転(合有)及び信託」と記入します。
原因
原因には信託契約の成立した日及び「信託」と記入します。
「年月日信託」
権利者
登記権利者の住所・氏名を記入します。受託者が2名以上の場合でも持分は記入しません。
権利者 (信託登記申請人)B
義務者
登記義務者の住所・氏名を記入します。
義務者 A
添付情報
添付情報には「登記原因証明情報」、「登記識別情報又は登記済証」、「印鑑登録証明書」、「住所証明情報」、及び「代理権限証明情報」、「信託目録に記載すべき情報」と記入します。
申請日及び管轄の法務局
申請日には登記申請書を法務局に提出する日を記入します。郵送の場合は発送日で構いません。
また、申請日の横に、登記を申請する管轄の法務局名を記入します。管轄の法務局とは不動産の所在地を管轄する法務局です。管轄の法務局はネットで「〇〇市 不動産登記」と検索すれば出てきます。
課税価格
課税価格にはその金額を「金○○円」と記入します。課税価格は登録免許税の算定の基礎となるものです。
課税価格は、申請する不動産の固定資産税評価額の合計額の下三桁を切り捨てた額です。固定資産税の評価額は固定資産税の納税通知書に記載されてあります。そして、固定資産税の評価額は直近年度のものです。
例えば、土地Aの評価額が7,654,321円、土地Bの評価額が1,462,154円で、建物の評価額が2,356,521円の場合、まず土地Aと土地Bの評価額を足します。すると土地の評価額の合計額は9,116,475円です。次に、この額の下三桁を切り捨てます。すると課税価格である9,116,000円が算定されます。
次に、建物の評価額の下三桁を切り捨てます。すると課税価格である2,356,000円が算定されます。
これが課税価格の算定方法です。
なお、土地の評価額の合計額と、建物の評価額を合算しないのは、土地と建物では後述する登録免許税の税率が異なるからです。
登録免許税
登録免許税にはその金額を金〇〇円と記入します。登録免許税の額は、課税価格に税率を乗じた額の下二桁を切り捨てた額です。
まず、土地所有権の信託登記の税率は現時点で0.3%です。
例えば、土地の課税価格が9,116,000円の場合、9,116,000円の0.3%にあたる額は27,348円です。そして、この税率0.3%は租税特別措置法72条に基づく減税措置ですので、金額の横に根拠条文として「(租税特別措置法72条)」と記入します。
次に、建物所有権の信託登記の税率は0.4%です。
例えば、課税価格が2,356,000円の場合、2,356,000円の0.4%にあたる額は9,424円です。
最後に土地と建物の登録免許税額を合算し、この額の下二桁を切り捨てます。
すなわち、27,348円+9,424円=36,772円となります。そして、この額の下二桁を切り捨てた値は36,700円です。これが登録免許税額です。また、所有権移転登記にかかる登録免許税は非課税ですので、その根拠条文も記入します。
登録免許税 土地 金27,348円
建物 金 9,424円
合計 金36,700円
(所有権移転登記は登録免許税法第7条第1項第1号により非課税)
(なお、この算定方法による算定の結果が1,000円未満となった場合、登録免許税は一律1,000円です。登録免許税は収入印紙で納付しますので、登録免許税の金額分の収入印紙を購入し、A4サイズの白紙に貼り付けます。また、敷地権付区分建物の課税価格の算定はこれより複雑です。敷地権付区分建物の課税価格の算定方法の説明はここでは割愛します。)
租税特別措置法
登録免許税法
不動産の表示
不動産の表示には、土地であれば所在・地番・地目・地積を、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積を記入します。これらは不動産の登記事項証明書のとおりに記入します。
また、いわゆる分譲マンションなどの区分建物の不動産の表示はこれらと異なります。
敷地権付区分建物の場合、始めに一棟の建物の表示として、一棟の建物の所在、建物の名称を記入します。次に専有部分の建物の表示として、専有部分の家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積を記入します。さらに敷地権の表示として、符号、所在及び地番、地目、地積、敷地権の種類、敷地権の割合を記入します。これらも不動産の登記事項証明書のとおりに記入します。
その他
以上が登記の申請書の書き方ですが、これらの事項以外に申請書に記入すべきことがある場合、申請書に「その他」欄を追加し、この欄に記入します。例えば、登記識別情報の通知を希望しない場合には、「その他」欄に「登記識別情報の通知を希望しない。」と記入します。
所有権移転登記が完了すると登記権利者には原則登記識別情報が交付されます。しかし、登記権利者が登記識別情報の交付を希望しない場合、その旨を登記の申請時に申し出ると、登記識別情報の交付はなされません。なお、登記識別情報の交付につき特別の事情がなければ、登記識別情報の交付を希望すればよいです。
綴じ方
最後に申請書、収入印紙を貼った紙、添付書類の順番で重ねて、左端二か所をホッチキスでとめます。そして、申請書と収入印紙を貼った紙に契印(割印)をします。なお、信託契約書の原本の返還してもらうため、このコピーを申請書と一緒に綴じ、原本は綴じません。
信託目録
信託目録に記載すべき情報は、不動産登記法97条1項に規定されています。
不動産登記法
登記原因証明情報
登記原因証明情報は信託契約書ですが、報告書形式の登記原因証明情報でも構いません。
【登記の原因となる事実又は法律行為】
- 信託契約
令和年月日、A及びBは、Aを委託者及び受益者、Bを受託者とする信託契約を締結した。そして、Aは本件不動産をBに信託し、Bはこれを引き受けた。 - 所有権の移転
よって、本件不動産の所有権がAからBに移転した。