概要
姻族関係終了の意思表示とは、姻族関係を断ち切る手続きです。姻族関係終了の意思表示は俗に死後離婚とよばれることがあります。
しかし、死後離婚という呼び名と、姻族関係終了の意思表示の効果は、かけ離れています。
はじめに用語の説明をします。
血族
血族とは、血の繋がりのある者同士です。例えば、自分と「自分の父母」や、自分と「自分の兄弟姉妹」との間には血族関係があります。
姻族
姻族とは、次の1又は2の者同士です。
- 自分と「自分の血族の配偶者」
- 自分と「自分の配偶者の血族」
1につき、例えば自分と「自分の兄弟姉妹の配偶者」との間には姻族関係があります。
2につき、例えば自分と「自分の配偶者の父母」との間には姻族関係があります。
配偶者
自分と「自分の配偶者」との間には血族関係も姻族関係もありません。
親族
親族とは、六親等内の血族、配偶者、及び三親等内の姻族をいいます。
例えば、自分と「自分の配偶者の父母」は一親等の姻族です。
また、自分と「自分の配偶者の兄弟姉妹」はニ親等の姻族です。
よって、「自分の配偶者の父母」と「自分の配偶者の兄弟姉妹」はいずれも自分の親族です。
なお、「三親等内の姻族」であることは、「三親等内の親族」であることを意味します。
姻族関係の終了
姻族関係は婚姻により生じますが、終了することがあります。
次に姻族関係が終了する場合を説明します。
離婚
離婚した場合、姻族関係は終了します。
死亡
夫婦の一方が死亡した場合、姻族関係は原則終了しません。もっとも、生存している配偶者が姻族関係終了の意思表示をした場合、姻族関係は終了します。
姻族関係終了届
姻族関係終了の意思表示とは、具体的には管轄市町村に姻族関係終了届をすることです。
なお、姻族関係終了の意思表示をするか否かは、生存している配偶者の一存で決めることができます。すなわち、生存している配偶者は、その姻族関係にある者の同意なく姻族関係終了届をすることができます。
扶養の義務
最後に姻族関係終了の意思表示と扶養の義務の関係を説明します。
既述のとおり、「三親等内の姻族」であることは、「三親等内の親族」であることを意味します。
また、三親等内の親族間においては扶養の義務が生じることがあります。
そのため、この扶養の義務を生じさせないために姻族関係終了の意思表示をすることがあります。
(親族の範囲)
第七百二十五条 次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
(離婚等による姻族関係の終了)
第七百二十八条 姻族関係は、離婚によって終了する。
2 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
(親族間の扶け合い)
第七百三十条 直系血族及び同居の親族は、互いに扶たすけ合わなければならない。
(扶養義務者)
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。