不動産の個人間売買の流れ
はじめに流れを説明します。
手順1
売買契約の対象不動産を把握するために、固定資産税の課税明細書を確認します。
手順2
売買契約の対象不動産を確定するために、手順1で確認した不動産の、登記事項証明書を法務局で取得します。
手順3
不動産登記事項証明書の所有者欄を確認し、所有者の住所・氏名に変更がないか確認します。
ここで、住所・氏名に変更がある場合には先に住所氏名変更登記が必要です。また、相続登記が必要な場合は先に相続登記が必要です。
また、建物が登記されていない場合には建物表題登記が必要です。
手順4
土地につき売主が隣地所有者と土地の境界を確認します。
建物につき売主が設備を確認します。
手順5
手順4で確認した土地の境界や建物の設備を売主が買主に明示します。売主と買主で売買代金を決めます。
手順6
売買契約書を作成します。売買契約書には売買代金・土地の境界・建物の設備・代金支払日などを明記します。
手順7
売買代金支払日に売主が買主に代金を支払い、管轄法務局に登記を申請します。
売買不動産の特定
不動産を売買する場合、はじめに売買する不動産を「登記上で特定」します。
不動産を「登記上で特定」するとは具体的には法務局で不動産の登記事項証明書を取得することです。
不動産の登記事項証明書
不動産の登記事項証明書とは、不動産の登録内容を証明する書類です。不動産の登記事項証明書は法務局が発行するもので、登記事項証明書が取得できる法務局であれば、不動産の所在地を問わず、全国どこの法務局でも取得できます。
また、法務局で登記事項証明書を取得する代わりにインターネットで登記情報を取得することもできます。登記情報とは登記事項証明書の内容をインターネット上で確認するものです。
ただし、不動産の登記事項証明書を取得するには、土地であれば所在・地番を、建物であれば所在・家屋番号を特定しなければなりません。これらをここでは便宜上「不動産の所在事項」といいます。
固定資産税の課税明細書
不動産の所在事項を確認する最も簡易な方法は固定資産税の課税明細書を確認する方法です。
ところで、建物は登記がされていないことがありますが、建物の登記がなされていなくても固定資産税は課税されます。
すなわち、固定資産税の課税明細書に建物の記載があっても、建物の登記事項証明書を取得できない場合があります。
売買不動産の現地確認
売買不動産を登記上で特定しましたら、次に売買不動産の現地確認をします。
ここで、売買不動産の現況と、不動産登記に齟齬がある場合には不動産登記手続きを先にしなければなりません。
例えば建物が未登記であったり、建物の登記はあるが増築部分が未登記であったりする場合には建物表題部に関する登記をしなければなりません。
土地の境界
現地確認において、土地の場合には隣地との境界を確認します。この境界確認においては土地家屋調査士の立会の下、正確な境界を割り出し、杭を打つのがベストです。
しかし、この手続きには最低数十万円かかりますので、売買代金に比してこの手続き費用が高額になる場合にはこの方法は現実的ではありません。
そこで、売主が買主に対して売主が認識する境界を明示し、買主が了承することで簡易的に土地の境界確認を済ませる方法があります。
しかし、この簡易的な方法は後々の境界トラブル引き起こす可能性が相対的に高いですので、ベストな方法ではありません。
建物の設備
現地確認において、建物の場合には建物の設備を確認します。
建物の売買においては建物の設備は建物と一緒に買主に引き渡しますので、買主が設備を把握する必要があります。そこで、設備の有無・設備の利用の可否を売主が買主に明示します。
なお、建物の設備がすべて正常に使用できる必要はありません。建物設備有無・利用の可否は売買代金を決定する要素に過ぎないからです。
また、売主負担で事前に撤去する設備についてはその旨も明示します。
売買契約
売買不動産の特定と売買不動産の現地確認が終わりましたら、売買契約書を作成します。
売買代金は売買不動産の特定と売買不動産の現地確認を考慮して決めるのが本筋です。もっとも、個人間売買ではこれらの手続きの前に既に売買代金が決まっていることが大半です。
そこで、予め合意した売買代金を基にこれらの手続きを踏まえて再度売買代金を修正することもありえます。
また、売買契約において、売買契約書の作成は後々の紛争を避けるために必須です。売買契約書には買主・売主双方が署名し、実印を押印するのがよいです。
そして、売買契約書は2通作成し、買主・売主はそれぞれの印鑑証明書を交換します。
不動産決済
売買契約が終わりましたら、いよいよ不動産決済です。
不動産決済とは売買不動産の代金支払いと不動産登記を同時に行うことです。
不動産売買における不動産登記とは不動産の名義を売主から買主へ変更する手続きを意味します。
ところで、代金支払いと不動産登記は必ずしも同時に行う必要はありません。しかし、これらを同時に行わないとすれば代金支払いと不動産登記のいずれかを先に済ませる必要があり、売主と買主いずれか一方が不安定な地位に立たされます。
また、売主の不動産の登記上の売主住所と売主の現住所が異なる場合には住所変更登記を、不動産の登記上の所有者が亡くなっている場合には相続登記をしなければ買主へ名義変更することはできません。