概要
未登記家屋所有者変更届とは、未登記建物の所有者が変わった場合に、未登記建物所在地の市町村にその旨を届け出る手続きです。
未登記家屋所有者変更届は、市町村に対して未登記建物につき固定資産課税台帳の所有者を変更してもらうために行います。
建物と家屋
未登記家屋所有者変更届の説明においては「建物」と「家屋」という用語が出てきます。もっとも、ここでの説明において両者を厳密に区別する必要はありません。
なお、不動産登記法では、不動産とは土地又は建物です。
これに対し、地方税法の固定資産税については、固定資産とは土地、家屋及び償却資産の総称です。
ここでは「建物」という用語を主に使用します。
建物の表題登記
建物の表題登記とは建物が発生した後に最初にする登記で、建物を現地調査して登記記録に起こす手続きです。
新築した建物を取得した者は、取得の日から一月以内に建物の表題登記を申請しなければなりません。
しかし、住宅ローンを利用せずに建物を新築した場合には建物の表題登記がなされていないことがあります。
ここでは建物の表題登記がなされていない建物を便宜的に「未登記建物」とよびます。
なお、ここでの説明の「建物」には区分建物は含みません。
所有権保存登記
建物の表題登記が完了しますと、次に建物の所有者を公示する登記を申請することができます。この登記を所有権保存登記といいます。
所有権移転登記
所有権保存登記がなされた建物の所有者が変わった場合、所有者を変更する登記をすることができます。この登記を所有権移転登記といいます。
通知
不動産の所有権移転登記は法務局に申請しますが、これが完了しますと法務局は不動産所在地の市町村にその旨を通知します。
そして、この通知を受けた市町村はこの通知を基に固定資産課税台帳の所有者を変更します。
そのため、不動産の所有権移転登記をした場合は、不動産所在地の市町村に対して不動産の所有者を変更した旨を届け出る必要はありません。
このように不動産登記が正確になされていれば、固定資産課税台帳の所有者は、不動産の所有者の届出なく市町村によって変更されます。
これに対して未登記建物の所有者が変わった場合はこの手順になりません。
所有者変更届
未登記建物の所有者が変わった場合は建物所在地の市町村に未登記家屋所有者変更届をします。
なぜなら、この届をしなければ市町村は未登記建物の所有者が変わったことを基本的に知り得ないからです。
例えば、未登記建物を贈与した場合、この届をしなければ未登記建物の固定資産課税台帳の所有者につき、贈与者から受贈者への変更が原則なされません。
すなわち、未登記建物を贈与しても、未登記建物の固定資産税の納税通知書が引き続き贈与者へ送付される恐れがあります。
(なお、未登記建物を相続して所有者が変わった場合も同様の問題が生じ得りますが、実務上問題になることはあまりありません。)
必要書類
未登記建物を贈与した場合、未登記家屋所有者変更届においては次のものが必要です。なお、必要書類は市町村によって若干異なります。
届出書
届出書のひな型はネットで「○○市 未登記家屋所有者変更届」で検索します。
贈与契約書
贈与契約書のコピーを提出します。
印鑑証明書
未登記建物の贈与者の直近の印鑑証明書を提出します。
※届出書に贈与者の実印を押印します。
住民票の写し
未登記建物の受贈者の住所地を管轄する市町村と、未登記建物の所在地を管轄する市町村が異なる場合は受贈者の直近の住民票の写しを提出します。
届出書の書き方
ここでは未登記建物を贈与した場合の未登記家屋所有者変更届書の書き方の例を説明します。届出書のひな形や記入事項は市町村によって異なります。
表題
「未登記家屋所有者変更届書」と記入します。
宛先
建物所在地の市町村名を記入します。
申請日
届出書の提出日を記入します。
住所・氏名・連絡先
受贈者の住所・氏名・連絡先を記入します。
文言
「下記家屋の所有者を変更しました。」と記入します
未登記家屋の表示
所有者が変わった未登記家屋の情報記入します。固定資産税の課税明細書等のとおりに記入します。
変更事由
贈与契約日及び贈与した旨を記入します。
当事者
旧所有者には贈与者の住所・氏名を記入します。
新所有者には受贈者の住所・氏名を記入し、実印を押印します。
(登記所からの通知及びこれに基づく土地課税台帳又は家屋課税台帳への記載)
第三百八十二条 登記所は、土地又は建物の表示に関する登記をしたときは、十日以内に、その旨その他総務省令で定める事項を当該土地又は家屋の所在地の市町村長に通知しなければならない。
2 前項の規定は、次に掲げる場合について準用する。
一 所有権、質権若しくは百年より長い存続期間の定めのある地上権の登記又はこれらの登記の抹消、これらの権利の登記名義人の氏名若しくは名称若しくは住所についての変更の登記若しくは更正の登記若しくは百年より長い存続期間を百年より短い存続期間に変更する地上権の変更の登記をした場合(登記簿の表題部に記録した所有者のために所有権の保存の登記をした場合又は当該登記を抹消した場合を除く。)
二 登記簿の表題部に記録した所有者又は所有権、質権若しくは百年より長い存続期間の定めのある地上権の登記名義人その他総務省令で定める者から不動産登記法第百十九条第六項の申出を受けた場合
三 前二号に掲げるもののほか、総務省令で定める場合
3 市町村長は、第一項(前項(第一号に係る部分に限る。)において準用する場合を含む。)の規定による登記所からの通知を受けた場合には、遅滞なく、当該土地又は家屋についての異動を土地課税台帳又は家屋課税台帳に記載(当該土地課税台帳又は家屋課税台帳の備付けが第三百八十条第二項の規定により電磁的記録の備付けをもつて行われている場合にあつては、記録。以下この項において同じ。)をし、又はこれに記載をされた事項を訂正しなければならない。
(法第三百八十二条第一項の総務省令で定める事項)
第十五条の五の三 法第三百八十二条第一項に規定する総務省令で定める事項は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める事項とする。
一 土地の表示に関する登記をした場合 不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第十四条第一項の地図若しくは同条第四項の地図に準ずる図面又は不動産登記令(平成十六年政令第三百七十九号)第二条第二号に規定する土地所在図若しくは同条第三号に規定する地積測量図
二 建物の表示に関する登記をした場合 不動産登記令第二条第五号に規定する建物図面又は同条第六号に規定する各階平面図
三 不動産登記法第百十九条第六項の申出をした者の住所が記録されている登記簿の表題部について土地又は建物の表示に関する登記をした場合 当該住所に係る不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)第二百二条の十に規定する公示用住所(第十五条の五の五から第十五条の五の八までにおいて「公示用住所」という。)
(登記所)
第六条 登記の事務は、不動産の所在地を管轄する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所(以下単に「登記所」という。)がつかさどる。
2 不動産が二以上の登記所の管轄区域にまたがる場合は、法務省令で定めるところにより、法務大臣又は法務局若しくは地方法務局の長が、当該不動産に関する登記の事務をつかさどる登記所を指定する。
3 前項に規定する場合において、同項の指定がされるまでの間、登記の申請は、当該二以上の登記所のうち、一の登記所にすることができる。