農地の相続手続きとは
農地を相続した場合、農地がある市町村の農業委員会に届け出なければなりません。この届出は正式には「農地法第3条の3の届出」といいます。ここではこの届出をする手続きを便宜上「農地の相続手続き」と呼んでいます。そして、農地の相続手続きは先に相続登記を済ませると手続きがスムーズにいきます。
そこで、ここでは遺産分割などにより特定の相続人1人が農地を取得し、その旨の相続登記を済ませたことを前提とした農地の相続手続きの方法を説明します。
農地の相続手続きの必要書類
まず、農地の相続手続きの必要書類を説明します。
農地法第3条の3の届出書
この届出書は農地の相続人が記入する届出書です。この届出書のひな形はネットで、「○○市 農地相続届出書」と検索すれば、市町村のサイトでダウンロードできます。農地がある市町村のサイトにこのひな形がない場合は他の市町村のひな形でよいです。
相続登記の完了証
農地の相続手続きにおいては農地を相続したことを証明する書類が必要です。そのため相続登記の完了証のコピー及び相続登記申請書の控えを添付します。なお、相続登記をオンライン申請した場合は相続登記の完了証のコピーだけでよいです。
不動産の登記事項証明書
また、農地を相続したことを証明する書類には相続登記完了後の不動産登記事項証明書もあります。しかし、不動産登記事項証明書の取得には手数料が発生します。そこで、相続登記の完了証コピー及び相続登記の申請書控えを添付すると費用が抑えられます。
農地法第3条の3の届出書の書き方
次に、農地法第3条の3の届出書の書き方を説明します。
日付
届出書の日付は農業委員会に届出書を提出する日を記入します。郵送する場合は発送日で構いません。
届出先
届出書には「 農業委員会会長 様」と記載されてあります。ここには届出書を提出する農業委員会名を記入します。具体的には農地所在地の市町村の農業委員会です。
住所・氏名・連絡先
届出人の住所・氏名・連絡先を署名又は記名し、認印を押印します。届出人は原則、後述の「権利を取得した者の氏名等」に記載の者です。
届け出る旨の文言
届出書の「住所・氏名・連絡先」欄の下には次の文言があります。
「下記農地(採草放牧地)について、相続により所有権を取得したので、農地法第3条の3の規定により届け出ます。」
必要があればこの赤字部分を追記します。
権利を取得した者の氏名等
遺産分割などにより農地を相続した相続人の住所・氏名を記入します。
※令和5年9月1日様式変更により「権利を取得した者の氏名等」の欄に国籍等の記入欄が追加されました。
届出に係る土地の所在等
相続した農地の所在・地番・地目・面積を記入します。
地目欄は登記簿欄と現況欄に分かれています。そこで、登記簿欄には相続登記申請書(又は不動産登記事項証明書)に記載の地目を記入します。これに対し、現況欄には農地の現況地目を記入します。農地の現況地目が不明な場合は固定資産税の課税明細書(固定資産税の評価証明書)に記載されてある現況地目を記入します。
面積は相続登記申請書(又は不動産登記事項証明書)記載の地積を記入します。
備考欄は基本的に空欄ですが、農地の所有権全部ではなく持分を相続した場合に、その持分を記入するなどで使用します。
権利を取得した日
被相続人の死亡日を記入します。被相続人の死亡後に遺産分割協議をして特定の相続人が農地を取得した場合でも、遺産分割協議の日ではなく、被相続人の死亡日を記入します。
権利を取得した事由
「相続」と記入し、カッコ書で被相続人の氏名を記入します。
※記入例:相続 (被相続人 松江太郎)
取得した権利の種類及び内容
「所有権」と記入します。
農業委員会によるあっせん等の希望の有無
届出書の農地につき、農業委員会による第三者への譲渡・賃貸等のあっせんを希望する場合には「有」と、希望しない場合には「無」と記入します。