概要
はじめに大正4年式戸籍の概要を説明します。
大正4年式戸籍
大正4年式戸籍とは、大正4年1月1日から昭和22年12月31日までに作られた戸籍です。
大正4年式戸籍は戸主を中心にその親族で構成されます。
そのため、夫婦と、その夫婦と氏が同じ子を一つの単位として構成される、昭和23年式戸籍及び戸籍の電算(コンピュータ)化後の戸籍とはその構成が根本的に異なります。
編製
編製とは、戸籍を新たに作成することです。
例えば、家督相続や分家が生じますと戸籍が編製されました。
改製
改製とは、戸籍を既存の様式から新しい様式に作り直すことです。
改製は戸籍の根拠法令が改正された場合に生じます。
そして、改製前の戸籍、すなわち、改製によって作り直された前の戸籍を「改製原戸籍」といいます。
なお、大正4年式戸籍は昭和32年法務省令により昭和23年式戸籍へ改製されました。
そのため、大正4年式戸籍のうち、改製原戸籍は「昭和改製原戸籍」とよばれることがあります。
簡易改製
大正4年式戸籍から昭和23年式戸籍への改製には膨大な事務作業が必要であり、当時は処理が追い付きませんでした。
そこで、大正4年式戸籍のうち、新しい様式に適合する戸籍、すなわち、親子二世代で構成されている戸籍を暫定的に昭和23年式戸籍とみなし、大正4年式戸籍を流用しました。
これを「簡易改製」といいます。
戸籍と除籍
戸籍内の人物はその戸籍から除かれることがあります。
これを「除籍」といいます。
除籍されるきっかけは、例えば戸籍内の人物の死亡や、戸主の家族の婚姻です。
そして、戸籍謄本内の人物が全員除籍された場合、この戸籍謄本は除籍謄本となります。
なお、大正4年式戸籍謄本につき、昭和32年法務省令に基づく改製前に戸籍内の人物全員が除籍されていれば、その戸籍は除籍謄本です。
これに対し、大正4年式戸籍謄本につき、昭和32年法務省令に基づく改製前に戸籍内の人物全員が除籍されていなければ、その戸籍は改製原戸籍謄本です。
以上が大正4年式戸籍の概要です。
見方
次に大正4年式戸籍の見方を説明します。ここでは大正4年式戸籍を便宜的に「戸籍」とよびます。
大枠
まず戸籍の大枠を説明します。
この説明に使用する戸籍の見本は合計2枚で構成されます。
戸籍の1ページ目の下段には大きな枠が3つ、2ページ目には4つあります。
この枠には戸籍内の人物の名が入ります。
また、戸籍内の人物は皆、戸主の氏を称しますので、戸主の名の欄には氏も記載されます。
この戸籍の見本では1ページ目の名の枠がすべて埋まり、2ページ目の名の枠が2つ埋まっているとします。
そのため、合計5人分の情報が記載されています。
さらに、戸籍の筆頭には戸主の情報が記載され、そのあとに戸主の家族の情報が続きます。
名の上の欄には戸主との続柄が記載されます。この戸籍では戸主、戸主の妹、戸主の妻、戸主の長男、そして戸主の長女がいます。
以上が大枠の説明です。
次に戸籍の各項目を説明します。
冒頭
戸籍が昭和32年法務省令に基づき改製されていれば、冒頭に「改製原戸籍」と記載されます。
本籍・前戸主の氏名
ここには本籍と前戸主の氏名が記載されます。
戸主の事項
本籍欄の左隣は戸主の事項欄です。ここには戸主の情報や戸籍全体の情報が記載されます。
戸主の事項欄は右端から時系列に沿って記載されています。
もっとも、戸籍調査においては戸主の事項欄は左端からみると楽です。
「昭和61年10月6日再製」とはこの戸籍がこの日に再製されたことを意味します。再製の説明はここでは割愛します。
「昭和32年法務省令第二十七号」以下の記載により、戸籍が昭和32年法務省令に基づいて改製され、昭和34年6月25日に閉鎖されたことがわかります。
また、その右隣の「昭和32年法務省令第二十七号」以下の記載により、戸籍につき昭和33年4月2日に簡易改製がなされたことがわかります。
「昭和31年6月27日行政区画及び土地の名称変更」以下の記載により、本籍が変更されたことがわかります。
「○○と婚姻届出昭和2年3月29日受附」の記載により、戸主の婚姻日及びその配偶者の氏名がわかります。
「大正6年1月1日前戸主○○死亡ニ因リ家督相続届出同年2月9日受附」の記載により、戸主が前戸主から家督相続した事実及びその日付がわかります。
ここで、この記載の前戸主の氏名と「前戸主」欄の氏名が一致するかを確認します。
一致すれば、この戸籍は大正6年1月1日の家督相続に基づいて、同年2月9日に編成されたものであることがわかります。
すなわち、大正6年2月9日がこの戸籍の編製日です。
最後に、「本籍ニ於テ出生父○○届出明治33年1月5日受附入籍」の記載により、戸主の出生の情報がわかります。
この戸主の出生の情報はこの戸籍を編製する際に記載されたものです。
以上より、この戸籍は大正6年1月1日の家督相続による編成から、昭和34年6月25日改製前までのものであることがわかります。
仮に、戸主の出生からの戸籍を収集しているならば、その出生から大正6年1月1日の家督相続前までの戸籍を追加で請求しなければなりません。
具体的には、前戸主を確認し、本籍地の市町村に戸籍の範囲を指定して請求します。
家族の事項(戸主の妹)
戸主の情報の次に、戸主の家族の情報が記載されます。
ここでは戸主の妹の情報が記載されています。そして、妹の家族の事項欄にはその出生及び改製除籍の情報が記載されています。
ここで、「改製により新戸籍編成につき昭和33年4月2日除籍」の記載により、改製により妹につき新たに戸籍が編製されたことがわかります。
そのため、妹の名の欄にはバツ印があります。
また、妹の出生の受附日と、戸主の事項の編製日を見比べますと、出生の受附日の方が前です。
よって、この戸籍は妹にとって、大正6年1月1日の家督相続による編成から昭和33年4月2日改製前までのものであることがわかります。
仮に、妹の昭和33年4月2日改製後の戸籍が必要な場合は、本籍地の市町村に改製による編成後の戸籍を請求します。
ところで、妹の家族の事項欄の改製による除籍日と、戸主の事項欄の簡易改製日を見比べますと、両者は一致します。
よって、この戸籍では昭和33年4月2日の改製により戸主の妹を除籍したうえで、簡易改製をしていることがわかります。
すなわち、戸主の妹が除籍されますと、この戸籍内には戸主を筆頭に、戸主の妻、戸主の長男及び戸主の長女が在籍していることになります。
そして、この在籍状況は「夫婦と、その夫婦と氏が同じ子を一つの単位として構成」されている状況です。
このようにして、この大正4年式戸籍を暫定的に昭和23年式戸籍とみなしています。
家族の事項(妻)
次に戸主の妻の情報が記載されています。
妻の家族の事項欄には婚姻の情報が記載されています。
ここで、妻の婚姻日と、戸主の事項の編製日を見比べますと、編製日の方が前です。
よって、この戸籍は妻の昭和2年3月29日婚姻から昭和34年6月25日改製前までのものであることがわかります。
仮に、配偶者の出生からの戸籍を収集しているならば、配偶者の婚姻前の戸籍を追加で請求しなければなりません。
具体的には、配偶者の婚姻の情報の、従前の本籍、従前の戸主及び従前の戸主との続柄を確認し、従前の本籍地の市町村に対象者の「出生から婚姻まで」の戸籍を請求します。
家族の事項(長男)
次に戸主の長男の情報が記載されています。
長男の家族の事項欄には出生の情報が記載されています。
ここで、長男の出生の受附日と、戸主の事項の編製日を見比べますと、編製日の方が前です。
よって、この戸籍は長男の出生から昭和34年6月25日改製前までのものであることがわかります。
家族の事項(長女)
次に戸主の長女の情報が記載されています。
長女の家族の事項欄には出生及び婚姻の情報が記載されています。
すなわち、長女は婚姻により除籍され、長女夫婦のために新たな戸籍が編製されています。
そのため、長女の名の欄にはバツ印があります。
ここで、長女の出生の受附日と、戸主の事項の編製日を見比べますと、編製日の方が前です。
よって、この戸籍は長女の出生から婚姻までのものであることがわかります。
仮に、長女の婚姻により新たに編成された戸籍が必要な場合は、家族の事項欄の婚姻の情報を確認します。
具体的には、長女の婚姻の情報の、婚姻後の本籍、配偶者の氏名及び夫婦いずれの氏を称しているかを確認し、その本籍地の市町村に戸籍を請求します。
空欄
この戸籍には空欄が2つあります。
仮に戸主の家族が増えればこの空欄に入ります。
もっとも、この戸籍は昭和34年6月25日の改製により閉鎖されていますので、この改製日以降にこの空欄が埋まることはありません。
すなわち、改製日以降は改製後の戸籍に情報が入力されます。
末尾
戸籍の末尾には、証明文言、証明年月日、市町村長名及びその印が記載されます。
このうち、証明文言につき改製原戸籍謄本であれば「この謄本は、原戸籍の原本と相違ないことを認証する。」と記載されます。
これに対し、除籍謄本であれば「この謄本は、除籍の原本と相違ないことを認証する。」と記載されます。
以上が戸籍の見方です。